日々の絵本と読みもの

友だち付き合いも、恋も勉強もうまくいかない……でも。 『ハッピーノート』

友だち付き合いも、恋も勉強もうまくいかない……でも。

 『ハッピーノート』

聡子は小学6年生。
学校ではいつも、仲良しグループを率いるリーダーの機嫌をうかがい自分を出せずにいます。学校の息苦しさから逃れ、新鮮さを求めて通い始めた塾でも、いまひとつ周囲に馴染めない聡子。
でも、そんな聡子にもひそやかな楽しみがありました。それは、塾の帰りにドーナツショップでおちあい、いつも一緒に勉強をする霧島くんとの時間。でも、淡い恋心をいだきつつ、それを言い出せずにいます。

夏期講習が始まりました。
聡子は、霧島くんとふたりである計画をします。それは、お互いの苦手科目の問題集を問いてはそのノートを交換し、お互いに採点をしあうこと。夏期講習の間これを続ければ、きっと苦手科目を克服できる……。聡子はそのノートを「ハッピーノート」と名付けました。
ところが、新たに塾で知り合ったリサの気まぐれな行動に振り回されたり、「ハッピーノート」は交換しているけれど、霧島くんとはいっこうに進展のない毎日だったり、勉強が手につかず成績が下がってしまったり……。もやもやと気分が晴れない聡子は、ついにイライラが高じて両親にあたってしまいます。堰を切ったように涙があふれ出し、泣き続ける聡子。とまどいつつ、そんな聡子をやさしくなぐさめる両親。


新学期が始まっても、もやもやした気分を引きずる聡子は、リサとも、学校の仲良しグループのリーダーともぶつかってしまいます。でも、そのやりとりのなかで、相手に合わせるばかりではなく、隠していた自分のほんとうの気持ちを伝えるようになっていきます。そして、「ハッピーノート」にも思いがけない展開が……。

きっと、みずみずしくさわやかな読後感があなたを待っていることでしょう。大人の方にも、夏の終りのすこしアンニュイな気分のなかで、ぜひ味わっていただきたい作品です。ハードカバーの書籍版と、文庫版の両方で刊行されています。


「日々の絵本」担当・Y
チームふくふく本棚の長老。趣味は、お酒と野球とトロンボーン。

2019.08.28

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