9つまでは読み聞かせ~豊かな言葉は昔話の中に『ねえねえ、きょうのおはなしは…… 世界の楽しいむかしばなし』
『ねえねえ、きょうのおはなしは…… 世界の楽しいむかしばなし』
子どもが小学校にあがるころ、これからどんな本を選んでやったらいいか困ってしまう、という話をよく耳にします。そのようなとき、ぜひおすすめしたいのが昔話です。
昔話は、もともと口から口へ語り継がれていった物語です。はるか昔、ある名もない人がひとつの物語を語り、それを聞いて心を動かされた次の語り手が、その世界を思い描きながらよりうまく語り、そして次の語り手が……と、「物語世界」が受け継がれていきました。良い語り手は、良い聞き手だったといわれていますが、千年、数百年の間に、ことば・物語は実に美しく磨かれていき、豊かな世界を聞き手は受け取ることができるようになったわけです。
すでに、この地球上には、伝統的な口承文化はほとんど残っていませんが、グリム兄弟をはじめ、先人の丁寧な聞き取り、採取によって、各民族の昔話は活字になって残っています。そのひとつが、この『ねえねえ、きょうのおはなしは……』です。
子どもは文字が読めるようになっても、身近な人に本を読んでもらうのはうれしいものです。お家で就寝の前に、あるいは、先生が学校のお帰りの時間などに、1日1話、5、6分だけでも昔話を読んであげてみてください。読み聞かせをはじめると、あっという間に子どもがあちら側の世界に旅立ち、想像の翼を広げ、目をパチクリさせながら耳をそばだてている様子に驚かれることでしょう。そして、知らないうちに読み手も同じようにあちら側の世界に引っ張られ、いっしょに大冒険旅行しているのに気づくことでしょう。
昔話は、民族独自の文化を背景にしながら、人間の知恵、歓び、ユーモア、不思議……にあふれています。そして、目で読むよりは耳で聞く方がずっとわかりやすく想像が膨らむのが昔話です。きっと、子どもたちは「昔話の魔力」に魅了されるに違いありません。
再話・訳は、『スーホの白い馬』『グリムの昔話1』『グリムの昔話2』などでおなじみの大塚勇三さん。これまで出会ったたくさんの昔話(グリム、ノルウェー、ロシア、アイルランド、ギリシャ、韓国、ウイグル族など)の中から、よりすぐりの20話を収録しています。「赤ずきん」(グリム)などおなじみのお話から、「お屋敷の七人目の父さん」(ノルウェー)など結末に驚く作品まで、どれも面白く読み聞かせにおすすめできる昔話集です。各話の扉にあるPEIACOさんの素敵な挿絵も、きっと子どもたちの想像を助けてくれることでしょう。
姉妹本に、『三びきのやぎのがらがらどん』や「ナルニア国ものがたり」「指輪物語」などの翻訳で日本の児童文学の世界に大きな足跡を残した瀬田貞二さんの昔話集『さてさて、きょうのおはなしは……』(全28話 野見山響子画)があります。こちらもごいっしょにお楽しみください。どちらの本も、持ち運びに便利なハンディサイズです。
担当S 「ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、むっつ、ななつ、やっつ、ここのつ、とお」。最後に「つ」がつく年齢まで読み聞かせをしてあげるといいそうです~。
2024.01.25