55種の虫たちのなき声が勢ぞろい!『なく虫ずかん』
『なく虫ずかん』
9月に入ると朝晩めっきり涼しくなり、秋を感じるようになります。
そして、日が落ちると、急に外の暗がりが騒がしくなってきます。虫たちの合奏です。
ガチャガチャガチャガチャ(クツワムシ)
リーリリイー リーリリイー(スズムシ)
コロコロコロリー コロコロコロリー(コオロギ)
チンチンチンチロリン チンチンチンチロリン(マツムシ)
まるで、オーケストラの音楽会みたいですね。バイオリンにビオラ? オーボエにクラリネット? シンバルにティンパニー? じっと耳をすましていると、さまざま音色の響きに心が奪われます。
絵本『なく虫ずかん』は、このようなクツワムシ、スズムシ、コオロギ、マツムシなど身近な虫たちのなき声とその姿を、「楽しい音」と「臨場感あふれる精緻な絵」で描いた絵本です。
まずは、なき声の「楽しい音」のページ。ここではぜひ、虫になったつもりでゆっくりと声に出して読んでみてください。大きい文字は大きい声で、踊るような文字はダイナミックにテンポよく、そして、文字のまわりの記号や線にあわせて音をずり上げたりずり下げたりしてみると、もう立派な虫のなき声です。
そして、ページをめくると、謎解きのように、なき声の主のたくさんの虫たちがあらわれます。虫たちは実にさまざまな場所にひそんでいます。夏、木に集まるセミに始まり、秋の草むらの虫、林の中の虫、川の岸辺の虫、海辺の虫、などなど。思わぬ場所で暮らす虫たちにびっくりです。合計で55種類の虫たちがこの絵本の中に隠れています。
ところで、虫たちはなぜなくのでしょう。なき声はとても複雑な音色とリズムですが、もちろん悲しいからないているわけではありません。ほとんどの場合、オスがメスをよぶため、そして、子孫を残していくために懸命にないているのです。
虫たちには体にあった音の出し方があります。セミのようにお腹を伸び縮みさせてふるわせたり、スズムシのように大きな羽をこすりあわせたり、コロギスのようにうしろ足で足もとをたたいたり……。小さな虫が大きな音を出すためにはたくさんの工夫があります。
絵は、『冒険図鑑』『自然図鑑』『ぼくのロボット大旅行』『海辺のずかん』などの松岡達英さん。文は、『地面の下のいきもの』の大野正男さん。また、音の書き文字は「東芝日曜劇場」「月曜ロードショー」「3年B組金八先生」などのTV番組のタイトルデザインを手がけた篠原榮太さんです。そして、昆虫の音を楽譜に落としていってくださったのは、作曲家の佐藤聰明さん。巻末の解説ページには、なき声を再現した楽譜が付いていますので、こちらもどうぞお楽しみください。
担当S 虫たちも人間も「声」は大事ですねえ!
2022.09.19