日々の絵本と読みもの

切る~擦る~潰す~挽く~煮る~茹でる~蒸す~燻す~揚げる~干す『人間は料理をする生きものだ』

人間は料理をする生きものだ
動物たちはすごい!
つかまえた獣をたくましい歯でバリバリと音をたてながら骨までかみくだいて食べてしまうライオン。固い草をむしゃむしゃと一度のみこんだあと、また口にもどしながらいくつもの胃で消化してしまう牛。毒のあるユーカリの葉っぱをおなかの中で分解することができるコアラ。
動物たちは、それぞれの食べものをそのまま食べられる体をもっています。

ところで、人間はどうなのでしょう?
そうです。「人間は料理をする」ことで、地球上のさまざまなものを食べることができるようになりました。その人間のすごさ!をさまざまな角度から掘り下げていくのが『人間は料理をする生きものだ』です。

たとえば、鰻重を食べるまでには……。
にょろにょろの鰻を~まな板の上で開き~内臓や背骨をとって~串にさして~炭火にかけ~両面を焼き~セイロで蒸して~たれをつけて~また焼いて~いただきます~ということになります。なんて手間がかかることなのでしょう。


こうしてみると、人間は実はすごい!のです。
人間は、「育てたり」「とってきたり」「買ってきたり」した生きものを、いろいろな道具を使って食べやすい大きさに「切り」、それを「擦ったり」「潰したり」「挽いたり」して、より細かく消化しやすい形にかえていき、そのあと、「煮たり」「茹でたり」「蒸したり」「焼いたり」「燻したり」「揚げたり」「干したり」、ときには「発酵させたり」しておいしく食べられるように工夫していったのです。

私たちは、毎日3度のご飯を食べていますが、1年365日、ずっと生肉や、草や葉っぱだけだと思うとぞっとします。あらためて、お味噌汁一杯の中にこめられた人間の知恵、工夫、そして愛情に、しみじみ感謝したくなる作品です。

フォトジャーナリストの著者森枝卓士さんは、アジアをはじめ、世界各地を歩き、食を中心に写真、文章を発表されていますが、本作品の姉妹本『食べているのは生きものだ』や、膨大な「食」の写真で構成した『食べもの記』もどうぞいっしょにお楽しみください。

担当S 料理道具もいろいろ。浅草かっぱ橋道具街に行きたくなりました~。
 

2024.03.18

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