恐竜学の最新研究!『恐竜のあたまの中をのぞいたら ―脳科学でさぐる恐竜の感覚―』
『恐竜のあたまの中をのぞいたら ―脳科学でさぐる恐竜の感覚―』
太古の時代、この地球に生きていた巨大な恐竜たちは、まわりの世界をどのように感じとっていたのでしょう。この不思議を解き明かすために、最強の恐竜ティラノサウルスの大きな頭の化石を最先端の技術を使って調べていくのが、絵本『恐竜のあたまの中をのぞいたら ―脳科学でさぐる恐竜の感覚―』です。
まずは、ティラノサウルスの頭の骨をじっくりとながめてみましょう。よく見ると、いろいろなところに大小さまざまな穴があいているのがわかります。目があった穴、鼻があった穴、たくましい筋肉があった穴、細かい神経や血管が通っていた穴……。
前から頭の骨を見ると、2つの目の穴が、獲物をにらみつけているように見えます。骨に残った目の位置によって肉食であったか草食であったかがわかるのです。
脳は化石として残りませんが、頭のうしろの方に残された空間のかたちをCTスキャナで調べ、3Dプリンターで脳の模型を作っていくと、さらにティラノサウルスの太古のくらしぶりを見えてきます。たとえば、脳の中には、ものを考えたり記憶したりする「大脳」、においの情報をあつかう「嗅球(きゅうきゅう)」、見る、聞くなどの感覚をコントロールする「中脳」、目で見た情報をあつかう「視蓋(しがい)」、歩く、走るなどの運動をコントロールする「小脳」といった部分があります。それらの大きさによって、「見る」「聞く」「かぐ」、どの感覚が優れていたか、劣っていたか、判断することができるのです。
そうして、作品では、恐竜に最も近い「ワニ類」の脳と比べたり、恐竜の子孫の「鳥類」に近い恐竜バンビラプトルの脳も紹介しながら、生きものの進化についてお話は膨らんでいきます。
まさに、恐竜学の新しいとびらをひらく一冊です。
作者は、『羽毛恐竜』(真鍋真 監修)や『とりになったきょうりゅうのはなし 改訂版』や『きょうりゅうのおおきさってどれくらい?』など恐竜に関する絵本を描かれている大島英太郎 さん。
絵本に登場する「おじさん」のモデルは、本書の監修者でもある河部壮一郎 さん。福井県立大学の恐竜学研究所で、脳科学の視点を活かした恐竜研究に従事する第一線の研究者です。巻末には、恐竜研究についてもっと知りたい読者のための解説も寄せています。
恐竜好き、恐竜に興味を持ちはじめた子どもたちにぜひ手に取ってもらいたい一冊です。
担当S 本物のティラノサウルスの化石を見にいきたくなりました。
2024.08.09