「あなた、まだアレを食べていませんね?」ー なぞの果実をめぐるちょっと変わったお話『4ミリ同盟』
「あなた、まだアレを食べていませんね?」ー なぞの果実をめぐるちょっと変わったお話
『4ミリ同盟』
主人公のポイット氏が住む街の人びとは、特殊な体質をしていた。大人になる頃に、ある日突然、からだと心が、〈フラココノ実〉なるものを必要とする。そうするともう、その果実をときおり食べないことにはやっていかれなくなるという、なんともふしぎな体質だった。
ところがポイット氏は、すでに中年のおじさんであるにもかかわらず、まだ〈フラココノ実〉を食べたことがない。これまで何度も、その実が得られる場所〈フラココノ島〉に渡ろうとしては失敗して……を繰り返していた。
小さなリンゴほどの、ヘリオトロープ色の果実。果汁豊かなその実は、やさしく切ない、遠い夢のような味がするという。いつになったら、その〈フラココノ実〉にかぶりつくことができるのだろう。
同じ憧れをもつ仲間と運命的に出会い、「4ミリ同盟」なる同盟を結んで目的を果たそうとするポイット氏。〈4ミリ〉とはいったい何を意味しているのか? はたして彼らは、夢の果実を食べることができるのか……?
ファンタジーの名手、高楼方子さんによる、ユーモラスでちょっと奇妙なお話です。
〈フラココノ実〉は、食べなければ〈何か〉が足りない、けれども、食べれば〈何か〉を失うという果実。いったい〈フラココノ実〉とは? そして、それを食べられる人と食べられない人の違いは? はたして、どちらが幸せ? ……と、思わずいろいろなことを考えてしまう、大人も楽しめる寓話的作品です。120ページと気軽に手に取れるボリューム、大野八生さんのおしゃれな挿し絵とともにお届けします。
2018.03.22