お留守番中に起こる不思議なファンタジー 『おるすばん』
『おるすばん』
『はじめてのおつかい』『かさもっておむかえ』『まよなかのトイレ』……いずれも、日常生活を舞台に、小さな子どもがひとりで何かに直面するときの“ドキドキした不安”と、その“ささやかだけど大きな達成”を描き、幼い読者たちの心を惹きつけて離さない絵本です。
本作『おるすばん 』も、そうした系譜に連なる一作です。
あっちゃんが幼稚園から帰ってくると、おばあちゃんの具合がよくないという電話がありました。お母さんは様子を見に出かけることになり、あっちゃんは、初めてひとりでお留守番をすることに。
お母さんが出かけると、部屋は急にしーんとなりました。こたつに入って、おやつを食べたり、人形や積み木で遊んだり、絵本を読んだりするうちに、部屋は少しずつ暗くなってきます。
のどが渇いたので、水を飲もうと台所にやってくると、床が「みしり」となり、「ぴとん」と蛇口の水滴が落ちたとたん……台所道具や野菜たちがいっせいに目をあけました!
怖くてこたつにもぐりこんだあっちゃん。外からは、「がらがら」「がしゃがしゃ どんどん」といろんな音が聞こえてきます。いったい何が起こっているのでしょう……?
お留守番という特別な時間に起こる不思議で美しいファンタジーを、精緻な鉛筆画にカラーインクを配した印象的な色遣いで美しく描いた一冊です。
このお話は、作者の森洋子さんの、お留守番の時にこたつにもぐりこんでじっとしていたという、幼少期の思い出が元になっています。絵本の中では、怖がるあっちゃんにぬいぐるみのくまやマトリョーシカ人形がそっと寄り添ってくれます。心細さや恐怖からだんだん解放されたあっちゃんの目の前には、楽しい世界が広がります――。
担当F 最近、家にこたつを買いました。一人で心細くなってこたつにもぐりこむ……ということは、さすがにもうないですが、ぽかぽかして、本を読んでいてもテレビを見ていても、すぐに眠くなってしまうのが目下の悩みです(笑)。
2024.12.20