日々の絵本と読みもの

恐いだけじゃない!『ホホジロザメ』『イリエワニ』

『ホホジロザメ』 『イリエワニ』

サメとワニ。恐ろしい生き物の代表といえば、この2種が筆頭に上がるのではないでしょうか。映画などフィクションの世界では、それぞれの恐ろしさを描く作品が数多くつくられていますし、子どもの本の世界では、近年、「危険生物」などの呼び方で各社の図鑑でも取り上げられるほどの人気ぶり。大人も子どもも、この“恐ろしい生き物”になぜか魅力を感じているようです。

大判サイズ(30×26cm)の迫力ある表紙が目をひく絵本『ホホジロザメ』と『イリエワニ』は、そんなサメとワニを描いた、いわゆる科学絵本と呼ばれるジャンルの絵本です。

ホホジロザメは、名作映画「ジョーズ」のモデルにもなったことで有名で、怖いサメの代表格。イリエワニは、は虫類最大級の大きさで、噛む力は動物の中で一番ともいわれています。どちらも、大きいもので全長6メートルを超えるというのですから、想像するだけで……。

どちらの絵本も、冒頭、それぞれが暮らす環境が描かれ、一見とても静かにはじまります。

『ホホジロザメ』のはじまり

『イリエワニ』のはじまり


 

……ですが、少しページをめくっていくと、狩りの決定的な場面が迫力満点に描かれ、一気に読者を引き込みます。


このほか、繁殖から次世代の誕生、そして独り立ちと厳しい生存競争……と、それぞれの一生と命をつないでいく姿が描かれます。

生物としての特徴がわかりやすい文章で紹介されるのも、科学絵本ならでは。たとえば、ホホジロザメが水中ですばやく泳げるのは、体表にするどくてかたい鱗(うろこ)がびっしり並んでいて、水がなめらかに流れていくから。イリエワニの肌はとても敏感で、人間の髪の毛1本の10分の1の細さでも感じることができます。

全体を通して感じるのは、私たちが生きる地球に、こんなにも驚異にあふれた生き物が、生きているということ。それは、それぞれの本の文章を手がける作者たちの強い思いによるものかもしれません。

『ホホジロザメ』の沼口麻子さんは、世界に一人という“シャークジャーナリスト”として、世界中のサメを取材し、サメという生き物の魅力をメディアなどで発信している方です。『イリエワニ』の福田雄介さんは、高校卒業後、ワニ研究の中心地であるオーストラリアに渡って世界的権威の下で学び、現在は豪州ノーザンテリトリー政府でワニの保護管理を専門とする研究員として勤務されています。

いずれもその道の専門家で、対象への愛がとにかく深いことが、そのまま絵本の魅力になっています。

絵は、どちらも関俊一さんが手がけています。関さんは、水族館のポスターや展示物も手がける画家で、三重大学で美術教育を教えています。一場面一場面、見せる工夫が凝らされた絵で、ページをめくる楽しみもあり、大人の方は画集のようにもご覧いただけるでしょう。ぜひ2冊あわせてお楽しみください。

担当F・福田雄介さんのX(旧Twitter)では、オーストラリアの野生ワニたちのかっこいい写真がたくさんアップされています。いつかオーストラリアに見に行ってみたいものです…。

2024.08.06

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