夜、ぼくはワニの歯みがきをしに床下へ 『ゆかしたの ワニ』
『ゆかしたの ワニ』
僕の家の床下にはワニがいて、僕は夜になるとワニの歯みがきをするために、床下へでかけていきます。かっぱを着て、長ぐつを履いて、大きな歯ブラシやバケツを持って、準備は万端! 床下のワニは、僕のことをにらみつけても、歯みがきだと分かると、あーんと口を大きくあけます。
ワニは巨大で、大きく開けた口はまるで洞窟のようです。そして、ワニの口の中には食べかすがいっぱい! 僕の腰に下げた袋の中に入っている七つ道具を使って、とり肉の食べかすや、奥歯にへばりついた魚の皮をきれいにします。歯の汚れを落とすのに時間がかかると、ワニの吐く息がどんどん荒くなって、僕を巻き込もうとしてしまうけれど、ちゃんとそれを防ぐ道具があるから大丈夫。日常と地続きの、ちょっとスリリングで不思議な世界が広がります。
「ぼくんちの ゆかしたには ワニがいて」と唐突に物語は始まりますが、お話を聞いている子どもたちは、いきなりぐっと心をつかまれてしまうのか、この不思議な世界にすんなりと入り込みます。
この不思議なお話を書いたのは、詩人・作家のねじめ正一さん。先日公開した「作者のことば」にもありますが、少年とワニの緊張感のある友情関係が魅力的な物語です。
絵を描いたのは漫画家・イラストレーターとして活躍するコマツシンヤさん。たくさんの生き物がうごめく床下の世界(ねずみに注目!)やワニの表情など、魅力あふれる絵です。特に、物語の最初と最後には、少年の家の断面図が描かれていて、見比べる楽しみもあります。ぜひ隅々までご覧ください。
担当A・息子達の大好きな絵本。この本を読んだあとは、いつもより歯みがきを丁寧にする気がします。
2022.06.04