作者のことば

作者のことば きしだえりこさん『こんやは はなびたいかい』

花火大会の夜。動物園の動物たちは、どんなふうに花火を見ているのでしょう。『かばくん』など数多くの絵本を手がけた詩人、岸田衿子さんによる詩情あふれるお話を、自然科学の研究者でもあるあべはるえさんが生き生きと描き出した『こんやは はなびたいかい』。ハードカバー化を記念して、初出「こどものとも年中向き」2005年8月号の折り込み付録に寄せられた、作者の岸田さんのエッセイを再録してお届けいたします。

花火は好き? きらい?

きしだえりこ

花火大会の日はだいたい人出が多く、お祭り気分で、ジュースや綿飴など売っていて、人ごみにもまれ、迷い子になりやすい。花火を静かに遠くから見ていたいという変わった子だっているでしょうね。お祭りが好きな子は花火も好き。花火だけは異常に好きという人がいます。私もその1人で、いつの頃からか花火に首ったけになり、首が痛くもなり、回らなくなったりしました。

花火を動物たちは好きでしょうか? 私がかってに動物たちに見せたくなったことが、この絵本ができるきっかけでした。以前ちょうど北海道の旭山動物園に取材に行くことがあって、春の動物園開きの日に花火をあげると聞いて、その日に合わせて友だち3人ででかけました。雪に閉ざされて休んでいた動物園を開くお祝い花火で、昼間の花火でしたが、3人がべつべつの場所で花火のあがるのを待ちました。動物たちの反応を見たくて。

私が鹿園の近くにいたら「ひゅーう、ぱ、ぱんぱん、ぱん」と何回かあがりました。もうここの動物たちは馴れているのか、ちょっと駆けだした鹿もいましたが、みんなゆうゆうとしています。サルだけはサル舎の屋根のまん中でボスらしいのがとびはねていて、他のサルたちもまわりでとびはねて踊っているみたいでした。

絵のあべはるえさんは、以前植物園に生息する小動物たちが残していったもので『うんこだらけ』というとても面白い小さい絵本を作られた人です。さすがにたくさんの動物をよく観察されているなぁと感心しました。花火は夜空に刺しゅうされて永久に消えない花火のようで、子どもたちの目にも、永久に残るといいなと思います。
 

(こどものとも年中向き2005年8月号 折り込みふろくより)

岸田衿子(きしだえりこ) 1929~2011。東京都生まれ。詩人。詩集に『ソナチネの木』(青土社)などがある。絵本に『かばくん』『ジオジオのかんむり』『ぐぎがさんとふへほさん』『きょうのおべんとう なんだろな』『木いちごつみ』(以上、福音館書店)『森のはる なつ あき ふゆ』(ポプラ社)『どうぶつはいくあそび』(のら書店)など多数。

2024.05.08

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