皮をぬぎ、さなぎになって、チョウになる!『へんしん すがたをかえるイモムシ』
『へんしん すがたをかえるイモムシ』
卵から生まれたイモムシは、何度も皮をぬぎながら成長します。充分に大きくなると、気に入った場所で糸をはき、からだをくくりつけて動かなくなります。さなぎになるのです。
そして時間が経つと、さなぎの色がだんだんと変化して、さあ、いよいよ……。
『へんしん すがたをかえるイモムシ』では、私たちに身近なチョウが卵からかえり、成虫に成長するまでの様子が段階をおって丁寧に描かれます。
登場するのは、モンシロチョウ、ナミアゲハ、ウラギンシジミ。いずれも庭や公園でごくふつうに目にするチョウですが、その成長のすべてを観察するのは、思いのほか、難しいものです。
著者の桃山鈴子さんは、イモムシをこよなく愛する昆虫画家。野山で採集した卵やイモムシを自宅で飼育し、実物や写真を丁寧に観察しながら絵を描きます。卵など、とても小さなものは光学顕微鏡で観察することもあります。
卵から幼虫が出てくるところ。終れい幼虫がさなぎになる過程。さなぎからチョウが出てくる場面。チョウの成長過程をつぶさに観察し、さまざまな「瞬間」をとらえるには、たくさんの時間と労力がかかります。描いた絵を監修者の井上大成さんに確認してもらいながら、何度も手直しを重ね、時間をかけて仕上げてゆきました。
原画は、紅茶などで染めた大きな紙に、カラーインクをつけた細いペンで点描を打つ画法で描かれます。ルーペごしに細かな点をひとつひとつ打っていきます。
画家の目を通し、タマゴからチョウまでの劇的な変化を見守ることで、生きものの美しさ、生きることの不思議さを改めて実感することができるでしょう。日本画を思わせる、繊細で美しい絵が印象的な絵本。
ぜひ、手に取ってご覧になってみてください。
担当M 描かれた細かな点が、生命体をつくる細胞ひとつひとつのようにも感じられて圧巻です。
2022.04.22