日々の絵本と読みもの

七夕のお話を、幻想的な日本画とともに。『てんにんにょうぼう』

七夕のお話を、幻想的な日本画とともに。

『てんにんにょうぼう』

むかしむかし、ひとりの男が畑で働いていると、天から、透き通るような衣をまとった天女たちが近くの川に舞い降りてきました。
天女たちは、衣を脱いで川で水遊びを始めます。それを見ていた男は、天女の衣を一枚取って隠してしまいます。水遊びを終えた天女たちは再び衣を着て天に登っていきますが、衣を取られた天女は残されてしまい、男といっしょに暮らすことになります。
やがて、男と天女は夫婦になり、太郎という子どもも生まれます。

あるとき天女は、ふとしたことから男の隠していた衣を見つけます。そしてそれを着ると、「自分は天に行くが、父親と一緒にあとから登ってくるように」と太郎に言い残し、ユウガオの種を渡して、天に登っていってしまいます。

天女が去って悲しみにくれる男と太郎。天女の残したユウガオの種をまくと、あっという間に芽を出しぐんぐん伸びて、たちまちつるが天に届きます。ふたりはそのつるをひたすらよじ登って天に向かいます。すると天女が迎えに来てくれ、3人は天上でまたいっしょに暮らせるようになるのでした。


ところが、採ってはだめと天女に言われていたアマウリの実を、男がもいだとたん、アマウリから水があふれ出して、あっという間に大きな川に……。


新潟に伝わるスケールの大きな昔話です。
絵を描いたのは、日本画家として活躍中の中井智子さん。天女の姿を求めて、日本の古い壁画や西洋の絵画などを参考にしたり、つるや花を描くために実際にユウガオの種をまいて育てたりしたそうです。金箔などを使う日本画の技法も駆使して描いた絵は、幻想的でたいへん美しく、子どもにもおとなにもじっくりと観ていただきたいです。

けっして幸せなだけのお話ではありません。人の一生には不条理とも言えるようなことが起こること、必ずしもハッピーエンドとは言えない結末。しかし、時代を超えて長く語り継がれてきたお話に宿る魅力を、無駄のない力強い語りと、美しい絵とともにたっぷりと味わってください。そして読み終わった後には、ぜひ夜空を見上げて、1年に1度の天女と男の出会いにも思いを馳せてみてくださいね!


「日々の絵本」担当・Y
チームふくふく本棚の長老。趣味は、お酒と野球とトロンボーン。

2019.07.05

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