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厳しくも美しい自然のなかに生きる、サーミの家族のものがたり『オーロラの国の子どもたち』

厳しくも美しい自然のなかに生きる、サーミの家族のものがたり


『オーロラの国の子どもたち』

皆さんは、サーミという名前を聞いたことがありますか? サーミは、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアの4国の北部にまたがる地域、北極圏に古くから暮らす人々のことを呼ぶ名前です。サーミの人々は、長い間その地域で、漁業や狩猟、牧畜を生業とした生活をしてきました。今でもサーミの土地と呼ばれる地域には、伝統的な生活を守って暮らしている人々がいます。今回ご紹介する『オーロラの国の子どもたち』は、トナカイ遊牧をするサーミの一家の1年間を描いた絵本です。

オーロラが空にきらめく北極の冬の夜。サーミのきょうだい、リーセとラッセは、家族のテントからこっそりと這い出して、なにやらひそひそと相談をはじめます。愉快なことをするのが大好きな二人は、テントの中ですやすやと寝ている家族をあっと驚かせようと計画しているのです。いったい、何をしようとしているのでしょうか……?

北極圏の厳しくて長い冬の間、子どもたちは家族や犬、トナカイたちとテントのまわりを駆け回り、元気に過ごします。食料を求めて移動をするときには、自分のトナカイが引くソリに乗って雪原を駆け、暖かいテントの中では、縫い物をしたり、木を彫って食器を作ったり......。

冬が去り、太陽が顔を出すようになると、子どもたちは村の学校へ行きます。世界のことを勉強したり、村の子どもたちと仲良くなったり、村での毎日もあっという間に過ぎてゆきます。そして、夏。山に戻ったリーセとラッセは、家族やトナカイと再会し、夏を過ごす海へと旅立つのでした。

この絵本の作者であるイングリとエドガー・パーリン・ドーレア夫妻は、アメリカの権威ある絵本賞・コールデコット賞をともに受賞したこともある、20世紀初頭のアメリカを代表する絵本作家です。ふたりがこの絵本の構想を練りはじめたのは、1930年代初頭のこと。妻イングリさんの故郷であるノルウェーの自然やそこに住む人々を愛した夫婦は、その様子を世界の子どもたちに伝えたいという思いを持ってノルウェー北部を巡る旅に出発し、そこでの体験をもとにして、1935年にアメリカでこの絵本を出版しました。

初版から80年以上の時を経ている古い作品ですが、そこに描きこまれた子どもたちからあふれる生命力にはまったく色褪せたところがありません。厳しい寒さや太陽のない日々をものともせず、自分の生きる環境の中に楽しみを見つけて喜ぶリーセやラッセたちの生活に、自分自身の幼い頃の他愛ない、けれどもとても楽しかった思い出が重なってくる方もきっといらっしゃるのではないかと思います。生きることを楽しむ力はきっと、時代や国や文化を超えて子どもたちに備わっている素晴らしい力なのだなと、嬉しくあたたかな気持ちになれる1冊です。



金曜担当・U
チームふくふく本棚のNew Face。趣味は、好きな俳優の演技を真似して悦に入ること。

2018.12.14

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