情けは人のためならず……豆腐屋七兵衛の情けが人の心を打つ『徂徠どうふ』
情けは人のためならず……豆腐屋七兵衛の情けが人の心を打つ
『徂徠どうふ』
講談を聴いたことがありますか?「落語や漫才なら知っているけど、講談ってなに?」という方も多いと思います。講談とは、昔の事件や出来事、活躍した人たちの物語をおもしろおかしく話して伝える芸能です。
室町時代くらいから始まった芸能で、江戸時代・明治時代にさかんになり、明治には講談の物語本を、日本中の人が夢中で読むほどの人気でした。戦国武将のお話や、相撲取りのお話、武芸物、仇討ち物のほか、水戸黄門、左甚五郎、ねずみ小僧、清水次郎長など、芝居や映画化され、より多くの人に知られるようになった人気の講談もあります。
大人が夢中になるおもしろい講談を、子どもたちも楽しめるようにと、講談師・宝井琴調さんが文を、ささめやゆきさんが絵を手がけてできた『講談えほん 徂徠どうふ』をご紹介します。
働き者の豆腐屋七兵衛さんが、朝から「とーふー、とーふー」と、豆腐を売り歩いていると、お侍の長屋で呼び止められます。お侍は豆腐に何もつけずに一丁ぺろりとたいらげてしまいます。「世の中に豆腐ほどうまいものはないなあ」というお侍に、七兵衛さんは次の日も、また次の日も豆腐をもっていきますが、お侍はいつも「豆腐代はあとではらう」と言ってお金を払ってくれません。
実は、お侍が豆腐代もはらえないほどまずしい暮らしをしていることを聞いた七兵衛さん。お侍を放っておけず、少しでも元気づけようと毎日おからを差し入れます。ところがある日、七兵衛さんが熱を出して寝込んでいる間に、お侍がいなくなってしまいます。さらに、お隣から出た火事で豆腐屋のお店が焼けてしまい、しょんぼりする七兵衛さん。そんな七兵衛さんを救ったのは……。
『徂徠どうふ』のお侍さんは、実在した荻生徂徠(おぎゅうそらい)という江戸時代の学者です。大人が楽しむ本格的な講談では、史実の赤穂事件を背景に、徂徠と七兵衛の人間模様が描かれますが、『講談えほん 徂徠どうふ』では宝井琴調さんが子どもたちにもわかりやすく、ぎゅっと凝縮したお話にまとめました。読んでもらってもよし、自分で読んでもよし、講談師・宝井琴調さんのイキのいい口調が存分に楽しめます。人の情けが胸を打つお話をぜひお楽しみください。
また、刊行を記念して『徂徠どうふ』の動画を公開しています。宝井琴調さんの講談を、ささめやゆきさんの絵とともに楽しめる動画です。絵本を読んだ後は、ぜひ親子でお楽しみください。
宝井琴調さんの講談『徂徠どうふ』動画はこちらです。
「日々の絵本」月曜担当・H
入社15年目。舞台鑑賞が好きです。子連れで楽しめる作品を中心に月2~3本鑑賞しています。
2018.11.12