イベントレポート

堀川真さん×加瀬健太郎さん『たぶん、なんとかなるでしょう。続』刊行記念トークイベント(前編)

2024年4月、子育てコミックエッセイ『たぶん、なんとかなるでしょう。続』の刊行記念イベントして、作者の堀川真さん(写真左)と、写真家で『お父さん、だいじょうぶ? 日記』(リトルモア)などの著書がある加瀬健太郎さん(写真右)との対談が、東京・神保町のブックハウスカフェにて行われました。
「子どもたちを不思議な生き物だなと思って見ていたところがあるかもしれない」
「2人目は物心つく前に、拾って食べて、なんか口に入ります」
などなど、気になるフレーズがたくさん飛びだし、会場は共感と爆笑の渦に…?! その様子を、前後編でお届けします。

編集部 本日は、『たぶん、なんとかなるでしょう。続』の刊行記念、堀川真さんと加瀬健太郎さんのトークイベントにお集まりいただき、ありがとうございます。堀川さんと加瀬さん、よろしくお願いします。堀川さんは、昨日、北海道の名寄からはるばるいらっしゃいました。

堀川 それが、飛行機なので意外と早いんですよ。遠いんですけど、そんなに大変じゃないです。

加瀬 さっきお土産を渡したんです。鳩サブレを。そしたら加瀬さんって、意外としっかりした人なんですねって言われました(笑)。

堀川 いや、対談相手にちゃんとお菓子持ってくる人なんだと思って…。僕もカバンに忍ばせていたものを渡したんだけど、実は出かける時に、うちの奥さんに「お土産いらないの?」って聞かれたんですよ。一応持っていくかなって、持ってきて良かったなって思いました(笑)。

お互いの本で、お気に入りは?

編集部 お二人は、今日が初対面なんですけど、共通点がありまして。一つは、お二人とも、男の子だけの育児をされている。堀川さんは2人のお子さん、加瀬さんはなんと4人のお子さん全員が男の子の育児をされています。

もう一つは、著作ですね。今日のイベントタイトルは「たぶん、なんとかだいじょうぶ? お父さんと子育てと」ということで、お二人の書名にかけているのですが、お気づきでしょうか。堀川さんは『たぶん、なんとなるでしょう。』、加瀬さんは『お父さん、だいじょうぶ?日記』という、父として子育てを描いた本を出されています。

まずは、お互いの本について、それぞれお気に入りのエピソードをお聞きしたいと思います。事前に伺っていまして、加瀬さんには『たぶん、なんとかなるでしょう。続』から、2話選んでいただきました。一つは、68話「もういいかい? どこですかー?」ということですが。

加瀬 選んだ2話とも、声出して笑ったところです。68話は、前半、隠れていたお母さんが出てくるところで、もう電車の中で笑っちゃったんですよ。でも、これについてここで語っても、そんな面白くならないと思う(笑)。実際に読んでもらった方がいいんですよ。で、もう一つは90話なんですけど、これも「ここがこう面白いですよ」ってぼくが言うと、面白くなくなっちゃうんで。90話って覚えてもらって、あとでそれぞれ読んでください。

編集部 作品全体についてはどうですか?

加瀬 細かいことでもいいですか? 自分とすごくかぶってるなってところがあったんですよ、絵本についての話で。あれ……なんやったっけ。ちょっと待ってくださいね。別の話、進めといてもらっていいですか(笑)。

編集部 堀川さんにも『お父さん、だいじょうぶ?日記』の中から、印象に残ったエピソードを1つ選んでもらいました。

堀川 「少林寺への道」という話ですね。加瀬さんが、飛行機のマイルが溜まって「どっか行ってきたら」って言われて、ジャッキー・チェンとか少林寺が好きだったから、中国に行こうとチケットを取るんです。でも、やっぱりどうしようかなって思って、結局行かないっていう話なんですよね。

加瀬さんの本を読んでいて、共通点があると感じたのが、年をとると「これを知ってどうするんだろ」っていうことに対して、もっとボーっとしたりすることの方が大事なんじゃないかなって思うことなんです。若い頃は、いろんなものを見てやろうと、例えば東京に来たら、あっちにもこっちにも行っていたような気がするんですけど、あんまり頑張らなくなってきて。そういう自分にフィットしたんですよね。

もう一つ共感した話があって。加瀬さんのお知り合いで、アーティストだという人がいて、いろんな“小さな仕事”をしているんです。加瀬さん自身はバイトに行くんだけど、そういう小さな仕事をいっぱい、堂々とニコニコしながらやっている人が、一番自由なんじゃないだろうかって思ったら、その人がかっこよく見えたってお話で、共感するところがあったんですよ。

ぼくも、先ほど、○○大学の教授ってご紹介いただきましたけど、今年で60歳ですが、そうなったのって50歳になってからなんです。それまでは、「絵本の仕事をしてます」と言っても、もちろん印税だけでは食えませんから、ほかにいろんな“小さな仕事”をコツコツやって、子育てしていたところもあったので。そういう暮らしってのもあるし、それが自由ってことなんだって認めてもらった感じがして、すごくほっとしたんです。

加瀬さん、話そうとしてたこと、思い出した?

加瀬 思い出しました。休みの日に、子どもをすぐエンターテインしちゃうんですよ。子どもが暇そうやなと思ったら、なんかやったり。「どっか連れてってよ」と言われたら、「じゃあ、どっか行こか。行かなあかん!」みたいになっちゃうんです。暇にさしたいんですけど、なかなか暇にできないというところで、あ、堀川さんも(本のなかで)同じこと言ってるって思ったんです。

堀川 かまっちゃうんですか?

加瀬 かまっちゃうというか、習い事さしたり、間を詰めがちになっちゃうんですよね。何もない日もあってもいいのに、詰め気味になっちゃう。だから、堀川さんの本で「暇しとけ 子どもがぼーっとしてる時間は大事や」みたいな話を読んで、そうだよなって。

堀川 僕は、加瀬さんの本読みながら、うちもこんな感じだったなって思っていたんですよね。そしたら、あるエピソードで衝撃が走って。長男が「塾に行きたい」って言うから、行かせたって話がありましたよね。そこで「本当に?! え、こういう子育てで、子どもってそういうこと言い出すの?!」ってびっくりして。

うちは、塾へ行くとか、そういう文化が全然なくて。うちの近くにも、附属小学校ってあって、「頭よくなる学校あるらしいんだけど、興味ない?」って上の子に聞いたら、「そういうのはいいな」って。それで終わっちゃったんですよね。上の子は高3、下は中2になりましたけど、塾とか習い事は今も行ってないです。

加瀬 まあ、塾行ったんですけど、あんまり勉強しなかったんですよ。塾って高いですよね…でも勉強しないんで、なんやねん、みたいな気持ちがありました。でも途中から、勉強勉強言うのをあきらめましたけど。

そう、かぶっている話がもう一つあって。子どもが「バカボン」の漫画を読んでいるでしょう。うちも「バカボン」読んでいるんですよ。「青島幸男って誰?」って聞いてきたし。絵本の『ぶたぶたくんのおかいもの』で、「池に魚がおるよね」って言ってましたよね。うちも言ってました(笑)。あと、『注文の多い料理店』を朗読する話がありましたよね。それで、子どもがすぐ寝ちゃうでしょう。それも一緒で、うちも寝るんです。だから、3つも一緒のことしてるなって(笑)。

堀川 漫画といえば、昭和の漫画にけっこう食いつきますよね。今の漫画って、敵と戦って友だちになるパターンが多いじゃないですか。あるとき、次男に『あしたのジョー』を薦めたら、一生懸命読んでて、最終回近くで主人公が真っ白に燃えつきちゃう場面で、「ええっ、何これ! 負けるの?! あ、死んだ!」ってびっくりしてました。読書のきっかけっていう話でもないんですけど、いろいろ転がしておくもんだなと。楽しむものが同じなのは嬉しいですしね。

(後編へ続く)

2024.06.16

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