イベントレポート

絵本から飛び出た「おもしろい」がいっぱい!|「谷川俊太郎 絵本★百貨展」@PLAY! MUSEUM(東京・立川)

日本を代表する詩人、谷川俊太郎さん。その活動は、詩作にとどまらず、「絵本」の世界でも、さまざまな画家や写真家、アーティストと共に、これまでに200冊にも及ぶ絵本を作ってきました。福音館書店では、『まるのおうさま』『こっぷ』など「かがくのとも」作品をはじめ、『あな』『生きる』など多彩な絵本を数多く生み出しています。そんな谷川さんの絵本をテーマとした展覧会が、東京・立川のPLAY! MUSEUMで、7月9日(日)まで開催中です。先日お邪魔したプレス内覧会から、展覧会の様子をご紹介いたします。

「谷川俊太郎 絵本★百貨展」@PLAY! MUSEUM(東京・立川)

「美しいより、おもしろく。意味があるより、おもしろく。」
展覧会の冒頭にかかげられた、本展のコピーです。谷川さんが作ってきた絵本は、ことばあそび、認識の絵本、ナンセンスの楽しみ、生きること、死ぬこと、戦争……実に幅広いテーマにわたっています。共通しているのは、言葉だけで表現できない、絵だけでも表現できない、絵と言葉が一体となって新しく生まれる「おもしろい」世界を表現していること。そうして作られてきたバラエティ豊かな世界のおもしろさを、本展では、百貨店ならぬ百貨展として、約20冊の絵本を取り上げ、多彩なクリエイターとともに、絵本原画、絵や言葉が動き出す映像、朗読や音、巨大な絵巻や書き下ろしのインスタレーション作品などで表現しています。


展示室に入ってすぐ目につくのは、地面に描かれた「けん・けん・ぱ」の丸の中にある、「かっぱ」「かっぱ」「らった」……の文字。瀬川康男さんとの名作『ことばあそびうた』の詩の言葉を、「けん・けん・ぱ」の遊びに仕立てた展示です。壁にかかっているペルーの民族楽器を手にジャンプすれば、しゃん、しゃん、しゃんと鈴の音も加わり、言葉遊びを体で感じることができるスペースになっています。


続いて、目に飛び込んでくるのは、1970年代、グラフィックデザイナー粟津潔さんと「かがくのとも」で共作した『まるのおうさま』(※)のアニメーション。図形の「まる」どうしが主張し合う様子が、鮮烈なビジュアルはそのままに、愉快なサウンドも加わり、映写されます。

※『まるのおうさま』は本展覧会にあわせて限定復刊中です。

同じくかがくのとも作品の『こっぷ』は、巨大な「こっぷ」のインスタレーション作品になっています。これだけでもインパクト大ですが、絵本の表紙の男の子のように(?)、コップの中に入れちゃう仕掛けも(中に入って写っているのは、この展示を担当されたアートディレクターの柿木原政広さんです)。


絵本の原画展示にも、おもしろい趣向が凝らされ、PLAY! MUSEUMならではの鑑賞体験を味わえます。たとえば、飯野和好さんとの共作『おならうた』(絵本館刊)。「いもくって ぶ」「すかして へ」……子どもたちが大好きな(!)「おなら」が、リズミカルなことばになっている楽しい絵本ですが、「おならドーム」なる黄色いドームの中に、原画がちょっと低い位置に展示されています。この高さの原画を見ようとすると、ちょうどお尻を突き出すような姿勢になります。そして、ときおりドーム内では、ぼっ、という音がするそうで……。

ほかに、junaidaさんとの新作絵本『ここはおうち』(ブルーシープ刊)や、タイガー立石さんの摩訶不思議な絵が魅力のしりとり絵本『ままです すきです すてきです』の原画なども展示されています。


つきあたりには、ひときわ大きなスクリーンがあり、太田大八さんとの共作『とき』(※)が映像作品となって投影されます。『とき』は、地球誕生からはじまり、恐竜がいた時代、江戸の昔、お父さんの子どもの頃、私の生まれる前、生まれたとき……と大昔から、今につながる時間を感じる絵本ですが、その雄大な時の流れと移り変わりが、砂や煙のような粒子の変化として映し出され、もとの絵本をさらに進化させた表現のおもしろさが感じられます。

※『とき』は本展覧会にあわせて限定復刊中です。

写真家・沢渡朔さんと共作し、少女と人形の共存と別れを描いた写真絵本『なおみ』(品切れ)のコーナーでは、講談師の神田京子さんの朗読が流れるのを聴きながら、沢渡さんの写真を鑑賞できます。写真表現とあわせた絵本の試みは、展覧会のための新作『すきのあいうえお』の展示作品としても登場しています。「あられ」「いるか」「う」…「とんねる」など、谷川さんが好きなものを五十音順に記し、それらを写真家の田附勝さんが日本各地で撮影して応えた写真が、スライドとして次々に映し出されます。

館内をまわって、ちょっと疲れたら、ベンチに座ってひと休み。よく見ると、ベンチには「あな」があります。そう、和田誠さんとの共作『あな』にインスパイアされたベンチで、『あな』をはじめ、『これはのみのぴこ』(サンリード刊)や『ともだち』(玉川大学出版部刊)など和田誠さんとの絵本が読めるようなスペースになっています。


展示の最後をしめくくるのは、元永定正さんとのナンセンス絵本『もこ もこもこ』(文研出版刊)の部屋。靴を脱いで上がると、谷川さんの朗読が響き渡る中で、360度ぐるり、絵と光で表現された『もこ もこもこ』の世界を体験できる空間になっています。

そして、PLAY! MUSEUMの展示といえば、毎回充実したグッズも見逃せません。福音館の絵本では、『まるのおうさま』ステッカーや、『こっぷ』のTシャツなど、斬新なデザインでグッズになっています。また、カフェコーナーでは「まるのおうさまハッシュドビーフ」なんてインパクトたっぷりのメニューも! こちらもぜひお立ち寄りくださいね。

ここまで、「谷川俊太郎 絵本★百貨展」をご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか? こちらでご紹介しきれなかった展示もまだまだありますので、日々、谷川さんの絵本に親しんでいる子どもたちや、かつて親しんでいたという大人の方、また、何かおもしろいことはないかなとお探しの方は、GWの連休など、ぜひこの機会に足を運んでみてくださいね。

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「谷川俊太郎 絵本★百貨展」
会期:2023年4月12日(水) - 7月9日(日) 会期中無休
会場:PLAY! MUSEUM
   〒190-0014 東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3棟 2F
開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
入館料:一般 1,800(1,200)円、大学生 1,200(700)円、高校生1,000(600)円、中・小学生600(400)円
■未就学児無料。( )内は立川市在住・在学の方を対象にした[立川割]料金。
https://play2020.jp/article/shuntaro-tanikawa/

2023.04.28

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