特別エッセイ|junaidaさん『世界』
『Michi』(2018年)、『の』(2019年)、『怪物園』(2020年)、『街どろぼう』(2021年)と、毎年、独自の想像力と美しく繊細な水彩画で、まったく新しい絵本を生み出しつづけているjunaidaさん。前作『街どろぼう』(2021年)から2年半ぶりの新刊『世界』に込められた思いについて綴ってくれました。ぜひ作品とあわせてお楽しみください。
たったひとつの無数の世界
junaida
僕は「読める絵」を描きたいといつも思っています。文字が添えていなくても読むことのできる一枚の絵。その絵は、そのまま一冊の絵本になるかもしれない。そんなふとした思いつきがこの本の出発点でした。
この絵を描く前に決めていたのは、ひとりの人が生まれて死ぬまでを描くということくらいで、内容については多くを決めないまま、本の出だしとなるシーンから描きはじめました。主人公の成長とともに少しづつ描いていくうちに、知らず知らず自分の内面や記憶を重ねながら描いていることに途中で気がつきました。言語化できることもそうでないことも、具体的な出来事も抽象的な感覚も、僕の内側で渦巻いている何かが、『世界』という名を与えられた絵になっていきました。
世界というのは自分の内側にも外側にもあります。遠くにも近くにもあり、過去にも未来にもあります。あらゆる生命の数だけあり、それと同時に、たったひとつしか存在しないのも世界です。
この絵本は僕の世界です。でも、知らない誰かの世界ともきっと重なっています。僕の世界も誰かの世界も、無数の世界が共鳴しているのが、僕らの世界だと思うのです。
2024.01.01