元気、わがまま、きかんぼうのしげるが主人公 『いやいやえん』
『いやいやえん』
幼い子どもたちの中には、それぞれの「しげる」がいるのではないでしょうか? 元気だけど、わがままできかんぼう。そんな保育園児しげるは、毎日元気にちゅーりっぷ保育園へ通っています。
『いやいやえん』には7つのお話があります。
一つ目のお話が「ちゅーりっぷほいくえん」。しげるの通う保育園の紹介です。ちゅーりっぷ保育園には、来年学校にいく「ほしぐみ」とほしぐみ以外の小さな子たちの「ばらぐみ」の2つに分かれています。先生は二人いて、背の低いはるのはるこ先生と、背の高いなつのなつこ先生。「はるのせんせい、小さいから、ばらのせんせい、なつのせんせい、大きいから、ほしのせんせい」と園児たちが言います。ちゅーりっぷ保育園には「歯をみがくこと」「爪をきること」など簡単な約束が70くらいありますが、しげるは一日で17回も約束を忘れるような男の子です。
他にも、ほしぐみが作った積み木の船に乗ると保育園が海になってしまう「くじらとり」、先生に怒られても謝らず、お友だちの真似をしたからだと言い張るしげるが、本当にその女の子そっくりになってしまう「ちこちゃん」、楽しそうなちゅーりっぷ保育園に山のこぐまが入園したいとやって来る「やまのこぐちゃん」、保育園を休んだしげるが原っぱでおおかみに食べられそうになる「おおかみ」、みんなで果物がなる5つの山に行く「山のぼり」が収録されています。
最後のお話が表題の「いやいやえん」。顔も洗っていない、洋服も着ていないしげるは朝からご機嫌ななめ。お父さんからもらったおみやげの赤い自動車は、赤は女の子の色だからいやだと言います。保育園へ行くのもいや、お友だちと遊ぶのもいや、お弁当もいや、と何もかもいやになったしげるは、はるの先生にすすめられた「いやいやえん」へ行くことになります。「いやいやえん」は好きなことだけしてもいい園です。園の先生のおばあさんは、「なきたけりゃ、おなき、けんかしたけりゃ、けんかをするし、ゆびをなめていたけりゃ、なめていいんだよ」と言います。しげるはそんないやいやえんに通うようになるのでしょうか?
『いやいやえん』はスタジオジブリの宮崎駿監督も、作者・中川李枝子さんとの講演会で「本当に衝撃でした。 初めて子どもそのものが本に出てきたという驚きを感じたんです。 ファンタジーというと何かと物に意味を与えたがる。主人公がこの世に帰ってきたときに賢くなっているとかね。 でも、『いやいやえん』はぜんぜん賢くならないまま終わる。 だけど、それが本当の子どもの姿なんです。」とお話しされていました。
これぞ子ども! というしげるの姿に、お話を読んでもらう子どもたちは共感をするようです。イヤイヤ期真っ最中の子どもたちともぜひ楽しんで欲しい作品です。
担当A・生まれてからずーーっといやいや期の2人の息子たち(いやいや期歴8年と4年)。ふふふと笑いながら聞いている様子にまだまだかわいいなと思います。
2022.12.25