なぜ悲しそうにしているの? 『わらってよ ピッコ』
『わらってよ ピッコ』
イタリアの小さな公園に三頭のロバと一頭のポニーがいました。四頭のおしごとは、公園にやってくる子どもたちをカートに乗せて引っ張ること。公園の係のおじさんにお金を払った子どもたちを、ひたすら一日中引っ張って走るのです。いつも眠たげなロバはゆっくり。小さなポニーはかけ足でせかせか走ります。子どもたちに人気なのは、のんびり公園をまわってくれるロバの方……。
ポニーの名前はピッコ。なぜかピッコはいつもかなしそうな顔をしています。そんなピッコのようすに気がついたやさしい兄妹のアルフレッドとジーナ。二人はなんとかしてピッコをわらわせようとあれやこれや考えます……。
「ピッコは、ほしいものがあるのかな?」「にんじんとか?」
「にんじんじゃなくて、りんごだったかな?」
「あまいおかしのほうがよかったんじゃない?」
「もしかすると、お花がすきなのかな?」
「ねえ、絵本をよんでみたら?」
……でも、ピッコはわらってくれません。
そうしたある日、アルフレッドと妹のジーナの誕生日がやってきて、二人はちょっとだけおこづかいをもらいます。そのとき、アルフレッドはいいことを思いつきます。
さあ、どんなことだったのでしょうね。
ピッコのために自分たちの思いつくかぎりの方法を試す兄妹が、健気にかつユーモラスに描かれた作品です。二人が知恵をしぼり、力を尽くす姿に、子どもたちは、きっと勇気づけられることでしょう。
ウクライナ出身の両親のもとアメリカで生まれたルイス・スロボドキン(1903-1975)には、世界各地を旅して、その旅先を題材にした作品がいくつもあります。そのひとつがこの作品。黄色い太陽の光がキラキラ輝きながら降り注ぐイタリアの明るい空気をこの絵本から感じることができます。
どうぞお楽しみください。
担当S 小さいころ、悲しげな捨て犬を家に連れて帰ったことがあったなあ。
2022.10.21