『おいしい絵本レシピ』刊行記念 野口真紀さんインタビュー
2017年4月号から2022年3月号まで、雑誌「母の友」で5年間つづいた人気連載「野口真紀のおいしい絵本レシピ」。料理研究家の野口真紀さんが、絵本の中に出てくる食材をテーマに、日常の食卓で“家族の時間がより豊かになるように”と、たくさんのレシピを提案してくれました。
その中から厳選したレシピを一冊にまとめた『おいしい絵本レシピ』が9月に待望の単行本化となりました。刊行を記念して、単行本に収められたレシピや子育てについて、野口さんに連載当時を振り返りながらお話を伺いました。
妄想レシピの誕生!
絵本に出てくる食べものって、すごくおいしそうですよね。これまでに、世界中の子どもたちをとりこにしてきたと思います。
私は、子どもがまだ小さかったとき、お気に入りの絵本に出てくるおかしを子どもと一緒に再現して楽しむということをしていました。子どもって、絵本にとても真剣に向き合っているから、おとなが気がつかないような小さな絵にも敏感ですよね。端の方に描かれているケーキなんかにもちゃんと気がついて、見つけたときはとってもうれしそうなんです。そんな姿を見ていたから、「絵本の中には実はもっとたくさんの“おいしい”がつまっているんじゃないか、それを再現したい」と思い、「母の友」の連載「野口真紀のおいしい絵本レシピ」がスタートしました。
でもやってみると結構大変で(笑)。絵本には具体的なレシピが書かれているわけではないし、どんな食材を使っているかも明確にはわからない。とにかく、想像を膨らませて、子どものように絵本の中に入りこみ、自分の頭の中であーでもないこーでもないと考えて、想像を超えた、まさに妄想で作ってきました。
こだわったのは、単に絵本の中そのままのビジュアルをということではなく、もちろんそこも大切にしつつ、実際に食卓に出しておいしいもの、誰にでも作りやすい食材や作り方であるということ。子育て中の親にとって、毎日の食事作りは大変。だからこそ、そのハードルを少しでも下げたかったんです。
絵本も料理もクリエイティブに
連載当初、担当編集者と一緒に、毎月数冊候補を出し合って、絵本を決めていました。でもそこから何をどうレシピ化するかは、良くも悪くも(笑)、私に丸投げしてもらっていました。制約がない分、自由に考えることができたし、かなり新しい挑戦ができた気がします。
料理家になって20年以上経ちますので、自分の中にレシピは数え切れないほどあるんです。でも、絵本という作品をベースに、その世界を感じながらひとつの料理を完成させていくという作業は、今までに感じたことのない、料理とはまた違ったクリエイティブな部分を刺激される時間でした。
料理研究家になったきっかけ
私はもともと、美術系の短大で学び、料理雑誌の編集者になりました。料理好きの母の影響で、私も料理が大好きだったので、料理に携わる仕事ができることがうれしかったし、撮影現場も好きでした。そしてたくさんの料理家の人たちと出会って、様々なジャンルの料理教室に通ううちに、私がやりたいことは、編集者ではなくて、料理を作ることなんじゃないかって、思いがどんどん募っていきました。
思い切って会社を辞めて、料理研究家としてデビューしたのは、上の子を出産してすぐ、26歳のときです。子育てと仕事の両立は目が回るようで、とにかく体を休める暇などなく働いていました。当時は大変でしたけど、ここまで続けることができて、天職とまでは行かないけれど、誰かをもてなしたり、喜んでもらうことが好きな私としては、料理家が向いているんだと思っています。
頼れる一冊に
そうはいっても、仕事と毎日の食事作りとはまた別のこと。私も疲れてしまってご飯の支度をしたくないときもあるんですよ。ときどきは外食をしたり、子どもたちに手伝ってもらったりもします。お母さんをしていると、どうしても子どものために無理をしてしまいがち。でもそこは無理をせずいきたいですね。自分自身も笑顔でいられるように、家族の食卓がより楽しく、より豊かになるように、『おいしい絵本レシピ』はそんな思いで作りました。毎日の献立や、おもてなし料理など、みなさんの助けとなれる一冊になったらうれしいです。(まとめ・編集部)
★野口真紀さんのインタビューは、「母の友」2022年11月号にも掲載予定です。お楽しみに!
野口真紀(のぐちまき)
1973年、東京都生まれ。料理雑誌の編集者を経て、料理研究家となる。おいしいことはもちろん、家族で囲む食事の時間が、料理を通してより豊かになるようなレシピを提案。著書に、『家族でごはん12か月』(新星出版社)、『ぱらぱらきせかえべんとう』(アノニマ・スタジオ)、『毎日食べて体すっきり 野菜の酢漬けと展開レシピ』(エムディエヌコーポレーション)など多数。
▶おいしい絵本レシピ特設ページ◀
2022.09.07