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昆虫に興味をもった子どもたちに!『今森光彦 昆虫記』

『今森光彦 昆虫記』

太陽の日差しが強くなり、ぬけるような青空が眩しい季節がやってきました。夏の到来とともに、蝉やカマキリ、チョウやバッタなど、多くの虫たちは、夏を謳歌するかのように鳴いたり、飛んだり、私たちに生き生きとした姿を見せてくれます。

昆虫に興味をもった子どもたちにぜひ手に取ってほしいのが、『今森光彦 昆虫記』です。昆虫写真家の今森光彦さんが、1年の300日以上通いつめるフィールドを舞台にした、12年に及ぶ観察の記録を1,700枚もの写真で紹介。昆虫の不思議さ、おもしろさ、多様さを感じることができる写真集です。

今森さんが通ったフィールドとはどこか、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。本の冒頭にこのような紹介文が載っています。
「私のフィールド(観察場所)は、主に滋賀県の湖西方面を中心として、南北約70キロメートル、東西約50キロメートルの範囲にあり、その中には、水をまんまんとたたえた琵琶湖がある。(中略)よく通うそれぞれの場所は、けっして特別な環境ではない。田畑があり、雑木林があり、小川があり、人家があるといった、日本ならどこでも見かける、ありふれた景観をもった場所だ」(「はじめに」より)。
昔から生きものと人が一緒に暮らしてきた場所を里山といいますが、私たちのすぐそばにある自然の中で「私たちの想像をはるかにこえた、さまざまな営み」を続ける小さな生きもの、昆虫の表情をおさめたのが、この作品なのです。

ページをひらくと、4月から3月までひと月ごとのカレンダーがあり、四季折々の虫たちの暮らしぶりが紹介されます。それぞれの観察記録は、さまざまな切り口もさることながら、楽しくて、さすが! というタイトルつきで語られるので、あまり虫に詳しくない人でも気軽に読むことができます。例えば、虫のアップの顔ばかりを並べたページでは、「我ら地球人」というタイトルがついていて、宇宙人もびっくりするような個性的な顔だちをした虫たちを見ることができます。

また、テントウムシやチョウ、カブトムシやカマキリなど、さまざまな虫の羽化の写真が載っているのも魅力のひとつですが、特にヤブヤンマとアブラゼミの羽化は、成虫誕生までの数時間を克明に撮影していて見ごたえ充分です。他にも、オトシブミの葉巻き作りの様子、形も色も多彩なチョウのさなぎ、水辺でトンボやコガムシの幼虫が獲物をとる瞬間、トノサマバッタやオオカマキリの産卵、果実や宝石のようにも見えるいろいろな虫の卵など、虫たちの多様な姿を知ることができます。

この夏、昆虫に興味をもった方はもちろんのこと、さほど興味のない方でも、驚くような虫たちの素顔に出会えますので、ぜひ手にとってみてください。

担当M
写真集の舞台となった里山の自然や、そこにすむ人たちの暮らしを記録した『今森光彦フィールドノート 里山』もおすすめの一冊。子どものころ、夏休みに遊びに行った祖母の家でのトンボ捕りを思い出して懐かしくなりました。

 

◇◇福音館の写真記シリーズについて◇◇
各分野の専門家たちが動植物の生態や人間の暮らしを、世界中に追い求め写真におさめたシリーズです。
大型本ならではの迫力で、専門家たちが目の当たりにした事実と驚きを伝えます。
全11作品はこちら

2022.07.30

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