大切なのは「好き」という気持ち『ハナはへびがすき』
『ハナはへびがすき』
生きものは好きだけれど、へびは苦手という人は多いのではないでしょうか。へびは細長くてへんな模様をしていて、触るのもちょっとためらってしまいますね。
でも、世の中には、まったくの逆で「へびがとにかく大好き」という人もいます。
この絵本は、そんなへびが大好きな女の子、ハナを描いたものがたりです。
ハナが好きなのは、へびだけではありません。黄と黒のまだらのクモや、ヌルヌルのおなかのカエル、ピカピカのトカゲも大好きです。なぜなら、よく見るとクモの巣はネックレスのようだし、カエルのおなかは真っ白い真珠のようだし、トカゲの模様は千代紙みたいだからです。
ある日、ハナは、自分が大好きな生きものを、みんなに見せてあげようと思い、連れていくことにします。小さな荷車に、いろんな生きものをのせて……。けれども、それを見たみんなは、びっくりぎょうてん。大騒ぎして逃げだしてしまうのでした。
そんな中、ひとりの女の子が、ハナのところにやってきます。ハルという子でした。ハルはハナと同じようにへびが大好きなのでした。
けなげでかわいらしいハナ、そしてハナが愛してやまない生きものたち、そこから広がるハナの世界を描いたのは、長年、アート活動を通して子どもたちと交流し続ける版画家・蟹江杏さんです。
実は、ハナという女の子は、作者の蟹江さん自身なのです。蟹江さんは小さい頃から生きものが大好きでした。ヘビをみつけては声をあげて歓喜し、部屋の中をクモの巣だらけにして遊んだりしたそうです。
絵本を読み終わるころには、「好き」という気もちをもっと大切にしたいと感じる、そんなあたたかい絵本です。
担当S 私はセミが大好きでした!
蟹江杏さんのエッセイはこちらから。
2021.11.19