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養蜂家のおじさんが教えてくれた、ミツバチのこと、命のつながりのこと『ミツバチ だいすき』

養蜂家のおじさんが教えてくれた、ミツバチのこと、命のつながりのこと


『ミツバチ だいすき』


早春。北国に住む「ぼく」のもとに、一通の手紙が届きます。「ミツバチをみにこない?」それは、となり町で養蜂業を営むおじさんからの手紙でした。おじさんの誘いをきっかけに、「ぼく」は養蜂場へと通うようになります。
 
おじさんの仕事は、はちみつ採りから養蜂場の見まわり、ミツバチの観察まで様々です。はちみつ採りの日、おじさんは、はちみつがミツバチの集めた花の蜜によってできること、そしてそれがミツバチにとって大切な食べ物であることを教えてくれました。「ぼく」は、自分たちがミツバチの一生懸命作った貴重な食べ物を分けてもらっていることを知ります。
おじさんはまた、ミツバチが蜜を集めながら花々の受粉を助け、果物や野菜を実らせていることも教えてくれました。畑のリンゴやカボチャが、ミツバチのおかげで実ることを知って、「ぼく」はびっくり!

「ぼく」は、ミツバチの観察を通して、ミツバチの寿命がとても短いことも知ります。蜜を集めたり、巣を守ったりする働きバチ(メスバチ)の寿命はたった1ヵ月。オスバチにいたっては、女王バチとの交尾という唯一の仕事を終えると、その場で死んでしまいます。そんな短い一生の中で、ミツバチはきちんと役割分担をして群れを養い、自然の循環を支える役目を果たしているのです。

養蜂場での手伝いを通して、人とミツバチ、そしてまわりの自然がすべて関わりあって生きていることを感じた「ぼく」は、ミツバチが、これからもたくさんの蜜を集められるように、ヒマワリの種やトチの木の苗を植えようと思うのでした。

文を手がけるのは、岩手県盛岡市にある養蜂場に勤務する藤原由美子さん。実地での経験を生かし、ミツバチの生態や、ミツバチが支える自然の循環をわかりやすく語ります。絵を手がけるのは、版画家の安井寿磨子さん。優しい色と柔らかい線の銅版画で、人とミツバチ、そして自然のつながりを温かく表現しています。
 
この絵本の大きな魅力は、ミツバチの生態や行動を科学的に伝えるだけでなく、物語を通してミツバチの世界を紹介していること。男の子のみずみずしい視点からみるミツバチの世界はまさに「センス・オブ・ワンダー」の宝庫です。図鑑とはまた一味違った驚きや発見の喜びを感じていただけたらと思います。



担当・U
チームふくふく本棚の2年目。趣味は、好きな俳優の演技を真似して悦に入ること。

2019.05.28

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