『ドエクル探検隊』刊行記念インタビュー

『ドエクル探検隊』刊行記念 松本大洋さんインタビュー

『ドエクル探検隊』の90点にも及ぶ挿絵は、漫画家の松本大洋さんによる描き下ろし。作者・草山万兎(河合雅雄)さんも、「長い物語を読み進める上で、おおいに読者の助けになる」とコメントしています。刊行を記念して、挿絵を描くにあたってのお気持ちや、お気に入りのシーンなどをうかがいました。

『ドエクル探検隊』刊行記念 松本大洋さんインタビュー


―とても長い物語ですが、最初に読んだとき、どんなことをお感じになりましたか? 

想像していたよりも、10倍近く長いお話で驚きました。読み進めていくうちに、竜二やさゆり、探検隊のみんなと冒険しているような気持ちになりました。お話を読み終えて、自分なりに、草山先生のおもいやメッセージを感じましたが、それを絵に表現するべきか悩みました。

―今回、90点にもおよぶたくさんの挿絵を描いてくださいました。

挿絵としてこれだけの点数を描いたことはないですね。あらためて絵を見返すと、正直、反省の気持ちが先に立ちます。好き勝手できる自分のまんがと違って、他の方の物語に絵を描かせていただくと、はたしてこれで良かったのかな、と毎回思います。

―挿絵を描いていくなかで、特に意識されたことなどありますか? 

先生が霊長類学者ですので、登場する動物たちは、できるだけ実際の姿に近づけようと心掛けました。

―起伏に富んだ物語のなかで、描かれた場面もじつにさまざまです。特にお気に入りのシーンはありますか?

98ページで、竜二と熊のユウザが話すシーンが好きです。351ページの、ムニャムニャオーンがゴッペに耳打ちするシーンも、うまく描けたと思い、気に入っています。

―逆に描いていて、難しいと思われた場面はありますか?

第二部以降、現存しない動物たちの描写には、とても苦戦しました。顔や体のつくりや、毛ざわりを表現することが難しかったです。

―絶滅哺乳類や想像上の動物も次から次へと登場しますものね。その中で、特に思い入れのあるキャラクターはいますか?

先生が霊長類の研究者ということが関係あるかわかりませんが、マーマン、キッキー、ポール、グリュオーン、ムニャムニャオーンたち、猿の仲間は、描いていて楽しかったです。

―ボノボのマーマンもニホンザルのキッキーもドエクル探検隊の一員ですね。同じく、探検隊に加わった竜二とさゆりについては、どんな印象でしたか?

さゆりが、とても忍耐強く、毅然としている様子が、とても女の子らしく感じました。
 

(おわり)


松本大洋(まつもと・たいよう)
1967年、東京に生まれる。漫画家。1988年に『STRAIGHT』(講談社「コミックモーニング」)で連載デビュー。以後数々の話題作を発表し、デビュー30周年の2018年に「松本大洋本」(漫画家本vol.4/小学館)が刊行される。
主な作品に『鉄コン筋クリート』『ピンポン』『吾 ナンバーファイブ』『竹光侍』(原作・永福一成/第15回手塚治虫文化賞マンガ大賞及び第11回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞)『Sunny』(第61回小学館漫画賞及び第20回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞)『ルーヴルの猫』(以上小学館)など。また絵本の絵を手がけた作品に『かないくん』(谷川俊太郎作/東京糸井重里事務所)、『「いる」じゃん』(くどうなおこ作/スイッチ・パブリッシング)などがある。

2018.07.13

  • Twitter
  • Facebook
  • Line

記事の中で紹介した本

関連記事