日々の絵本と読みもの

考えること、見つけることが楽しくなる!『はじめてであう すうがくの絵本』全3冊

『はじめてであう すうがくの絵本』

「数学」と聞くと、難しい計算をしたり、面倒な公式をおぼえたり……と苦手意識が先にきて敬遠してしまう人も多いことでしょう。
でも、『ふしぎなえ』「旅の絵本」シリーズなどの作品で、私たちに絵を見る楽しさを教えてくれた、安野光雅さんの手にかかると、違う世界が見えてきます。「どうしてなんだろう?」と考えたり、比べて違いを発見したり、創造したりすることのおもしろさや驚き。『はじめてであう すうがくの絵本』は、まさに、そんな数学との出会いを約束してくれる絵本です。

例えば、『はじめてであう すうがくの絵本1』には、「なかまはずれ」というテーマがあります。描かれた絵の中にひとつだけ他と違う仲間のものがあるので、それが何かを考えます。

ひとつだけ違うものを導き出すのは簡単そうでいて、あれこれ考えているうちにいろいろな答えが出てくることも。安野さんが「見方によっては2つの解が出てくるばあいもあるでしょうが、子どもがわからないときはいっしょに困ってやってください。」と本の中で書かれているように、まずは、ふしぎに思って考えることや、発見する喜びを知ることが何よりも大切、ということなのかもしれません。

他にも、1巻目には「じゅんばん」「せいくらべ」、2巻目には「かずのだんご」「みずをかぞえる」、3巻目には「まほうのくすり」「きれいなさんかく」など、シリーズ全3冊、それぞれ4つから5つのテーマで構成されています。順番に並べる、ものを比べる、数を数える、長さや量を測る、形をつくる、といった、数学のはじまりとなるものの見方や考え方を安野さんならではのユーモアをまじえて楽しく学ぶことができます。

1巻目の巻末に、「はじめに」と題した安野さんの言葉が載っていますので、一部をご紹介します。
「一昔前、算術や算数の姿をしてわたしたちを悩ませたのは、やはり数学の本意ではなかったのです。本当の数学は、発見の喜びをいたるところにちりばめながら、歴史はじまって以来、いまも創りつづけられつつある思考の大建築です。(略)もしそうだとしたら、この建築物が美しくなかろうはずはありません。何とかして子どもたちにその建築物をみる力をもたせてやりたい、と思うのです。」

この絵本を通して、安野さんから「ね、数学って、おもしろくて美しいでしょ」と言われているような気がします。子どもたちにとっても、数学との出会いがわくわくするような創造的体験になったら、こんなにうれしいことはありません。

担当M 「子どもも、おとなも、自分で考えるくせをつけてほしいのです。」とおっしゃる安野さんのエッセイ『かんがえる子ども』もおすすめの一冊です!
エッセイの中で紹介された本などをまとめた「安野さんの本棚」はこちらから。

2022.03.14

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記事の中で紹介した本

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