好奇心旺盛な子猫にハラハラドキドキ『ちいさなねこ』
『ちいさなねこ』
物語の世界の入り口に立つ幼い子どもたちに、まず最初に読んであげたいお話はなんでしょうか。
魅力的な絵本はいろいろありますが、今回、おすすめしたいのは、『ちいさなねこ』です。
お母さん猫が見ていない間に、ひとりで庭に下り立ち、走り出した小さな猫。子どもに捕まりそうになったり、車にひかれそうになったり、大きな犬に追いかけられたり、外は危険がいっぱいです。一難去ってまた一難、ハラハラドキドキの連続で小さな猫から目が離せません。
子猫が高い木に登って「にゃお! にゃお!」と鳴いているところに、声を聞きつけたお母さん猫が助けにやってきました。犬を追い払うと、お母さん猫は子猫を口にくわえ、自動車をよけ、子どものそばを通り抜け、家へと帰っていきます。
お話を読んでもらった子どもたちにとって、主人公の「小さな猫」は、まさしく自分と同じ存在。外で起きることに興味津々だけれど、まだ弱く、恐れを抱くこともたくさんあります。だからこそ、家へ無事に帰り、お母さん猫のおっぱいをのむ最後の場面で、ほっと安心できるのでしょう。
この『ちいさなねこ』について、作者の石井桃子さんが、のちに以下のように語られていますのでご紹介します。
「こういう筋のある本に、小さい子どもたちがいつから入っていくのか、とても興味があるんです。前のページと次のページの、つながりができるということ。ページをめくって場面が移り変わる時に、子どもの心に起こる変化って、人間の一生にとって、本当に大事なものじゃないかと思うんです。」(「こどものとも年中向き」2000年8月号折り込みふろくより)
簡潔な言葉といきいきとしたお話の展開、子猫の目線に立った場面構成が、物語に初めて触れる子どもたちにぴったりの『ちいさなねこ』。絵本だからこそできる体験を、ぜひお子さんと一緒にあじわってみてください。
担当M 何ものにも動じず子猫を助け出す、お母さん猫の頼もしい姿に憧れます!
2022.02.22