おせちの定番「黒豆」が、お正月の食卓に並ぶまで。『おばあちゃんのくろまめ』
おせちの定番「黒豆」が、お正月の食卓に並ぶまで。
『おばあちゃんのくろまめ』(「かがくのとも」2019年1月号)
お正月といえば、おせち料理。種々様々な料理を前に、どれから食べようと迷った経験のある方は多いのではないでしょうか。我が家では、昔から「栗きんとん」が一番人気。幼い頃は、お正月早々、きょうだいで栗きんとん争奪戦を繰り広げていたことが思い出されます。お菓子のように甘くて美味しいのがその理由でしたが、甘くて美味しいのは「黒豆」も一緒。少し大人になってからは黒豆の魅力に気づき、それ以来は、弟と妹の栗きんとん争奪戦を横目に見ながら黒豆を味わう、優雅なお正月を過ごせるようになりました。
さて、「かがくのとも」2019年1月号『おばあちゃんのくろまめ』は、そんな黒豆の生長の様子を描いたかがく絵本です。
年末、ある一家のもとに、おばあちゃんから黒豆が届きました。袋いっぱいの黒豆、これだけの黒豆を、おばあちゃんはいったいどうやって作ったのでしょう?
黒豆の種まきの時期は、梅雨の前。去年とっておいた黒豆を、柔らかい苗床にまいて土と藁を被せると、3日ほどで芽が出てきます。苗床がきゅうくつになると、おばあちゃんは苗を丁寧に畑に植え替え、黒豆がのびのびと生長できるようにお世話をします。
黒豆が膝丈に育つと、おばあちゃんは黒豆のてっぺんにある芽をちぎってしまいました。こうすることで枝が増えて、黒豆がたくさんなるようになるのです。なるほど、おばあちゃんの黒豆が、袋いっぱい実る秘密が分かったような気がします。
おばあちゃんの愛情をたっぷりと受け、台風などの悪天候を乗り越えてたくましく育った黒豆は、最後に一家の食卓に並びます。さて、そのお味は……? 黒豆を育てるコツがよくわかるだけでなく、黒豆ひとつぶひとつぶにそそがれている愛情、そして黒豆をとおして心を通わせる家族のつながりに心が温められる、お正月にぴったりの絵本です。
お話の中でも触れられていますが、「まめ」という言葉には「元気」という意味があります。お正月に黒豆を食べるのは、その一年間、元気に過ごせますようにとの願いを込めて。みなさまも新年が明けたらぜひ、甘くて美味しい黒豆を食べて、元気で豊かな一年をお過ごしください。
金曜担当・U
チームふくふく本棚のNew Face。趣味は、好きな俳優の演技を真似して悦に入ること。
2018.12.28