あのねエッセイ

かこさん、ありがとう! 特別エッセイ③|近藤初江さん&金澤 恵さん「保育現場から、書店から、かこさんへ」

5月2日、加古里子さんが逝去されました。半世紀以上に渡って子どもたちのために絵本を描き続けた加古さんを偲び、全3回の特別エッセイを掲載いたします。加古さんと生前に親交のあった方々、また、日々絵本を子どもたちに届けている方々が寄せてくださった、ありがとうのメッセージをぜひご一読下さい。
最終回は、保育士の近藤初江さん、書店員の金澤 恵さんのおふたりに寄せていただいたメッセージをご紹介いたします。

かこさん、ありがとう。

近藤初江

 
 私とかこさんの初めての出会いは今から30年以上も前で、初めて参加した保育研修会の講演者がかこさんでした。
 一人の保育士が「子どもたちは、かこさんの絵本が大好き。でも、かこさんの絵は小さいからみんなで見ると見えにくいので、もっと大きく描いてくれませんか」と質問しました。すると、「ぼくは、子どもたちに色んな物を見て欲しくて描いているうちにどんどん増えていってしまうのですよね」と優しく答えていました。「かこさとし」がどのような人なのかまだわからない私でしたが、今でもその言葉を覚えています。
 かこさんの絵本の魅力はなんといってもユーモアたっぷりのお話と個性的な登場人物でしょう。困ったことがあっても豊かな知恵で仲間と共に乗り越えて行く。そのたくましさが子どもにとって魅力なのでしょう。
 絵本の根底にあったのは子どもたちに、生きることは楽しいことがいっぱいあるよ。そして、その楽しさは平和の上に成り立っているのだよ。だから、自分たちで平和な世界を創ろうよ。というメッセージだったのではないでしょうか。
 かこさん、私たちは平和の担い手となる子どもたちを育てていきます。そして、その傍らにはいつもかこさんの絵本があります。

わたしも未来のだるまちゃん

金澤 恵


 子どもの頃、かこさんの『だるまちゃんとてんぐちゃん』を読んでもらった時、初めて絵本って楽しいものなんだと知りました。それからは何度も何度も繰り返し読んだことを今でも覚えています。
 だるまちゃんをきっかけに絵本が好きになった私は、現在書店員として働くことができていますが、時には書店員に向いていないと悩む日もありました。そんな時、だるまちゃんのディスプレイコンクールに参加するために手作りで装飾した棚の前で、楽しげに絵本を読む親子を見かけました。
 子ども時代に私がだるまちゃんを読んで純粋に楽しいと感じたように、今この子も同じ気持ちなのかもしれない。私が作ったこの売り場で絵本のすばらしさを感じてくれているのかもしれない。そう考えたら、悶々とした悩みもいつしか消えていました。
 私に絵本を好きになる、そして悩みから立ち直るきっかけをくれたのはかこさんです。かこさんの絵本を、直接子どもたちへ手渡しできるこの仕事に就けたことは宝物そのもの。私の大きな誇りです。
 “ちいさいこどもさんの未来のために”と残してくださったたくさんの絵本を、これからも子どもたちに伝えていきたいと思います。
 かこさんに会いたくなったら、絵本をひらいて会いにいきます。

2018.07.31

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