作者のことば 岡本雄司さん『でんしゃ すきなのどーれ』
「こどものとも年少版」2021年12月号として刊行された『でんしゃ すきなのどーれ』。色々な電車の顔が並ぶ表紙から想像できるように、全国各地の電車が登場し、親子で楽しめる1冊です。ハードカバー化を記念して、月刊誌の折り込みふろくに掲載された、作者・岡本雄司さんの「作者のことば」を再掲します。
表情豊かな電車たち、選ぶ楽しさ
岡本雄司
息子が3、4歳の頃、毎朝のように「せーの!やろう」と言って、プラレールの図鑑を持ってきました。これは「好きなのどーれ? せーの!」と言って、そのページに載っているプラレールの中で一番好きな電車を指差していくという遊びで、それがこの絵本の原型になっています。思えば私が子どもの時も、電車や恐竜の図鑑でよく友だちと同じようなことをしていました。似たものがたくさん並んでると、その中で一番好きなものを選んで「これがカッコいい」とか「こっちの色が好き」など、つい言いたくなる気持ちってありますよね。友だちと同じものを指差したりすると「やっぱりそうだよね」なんてお互い納得したりしながら、自分の趣味、友だちの好みが分かっていくのが楽しかったです。
また私は電車の顔、車の顔というのもよく言っていた記憶があります。「あの車怒ってる」「真面目そうな顔してる」など、人間や動物を見る目と同じ感覚で乗り物を見て、乗り物にも性格があるように感じていました。当時の特急電車などは形も色も似たものが多かったのですが、ヘッドマークのデザインが違うだけで、印象が随分違って見えたりしました。今は電車の種類もデザインのバリエーションも増えて、表情がさらに豊かになりましたね。
顔つきや形が好きというだけでなく、旅先で乗ったことがあったり、家の近くを走っていることで好きな電車もあると思いますので、今回の絵本ではなるべく全国各地の電車を描きました。また、ひと昔前に走っていた電車も出てきます。お父さん、お母さんも一緒にページをめくりながら「この電車、旅行した時乗ったね!」「子どもの時、この電車好きだったなー」とみんなで楽しんでくれると嬉しいです。
岡本雄司
神奈川県生まれ。画家、絵本作家。主に木版画や貼り絵の技法を用いて、旅先で見る風景や乗り物をテーマにした作品を発表している。版画本『電車よこぎる街』『地下鉄出口帖』『辻堂駅』『終点まで』(いずれも私家版)、四ツ谷駅全景の版画作品「四ツ谷駅」(JR四ツ谷駅構内展示2007-2011)を制作。絵本に『でんしゃにのったよ』『くるまにのって』『れっしゃが とおります』(「かがくのとも」2017年8月号、以上福音館書店)『いろんなでんしゃ はっしゃしまーす』(アリス館)がある。埼玉県在住。
2023.12.18