日々の絵本と読みもの

森の中、かあさんりすがどんぐりひろい『どんぐり どんぐり』

『どんぐり どんぐり』

深まりゆく秋、樹々の葉も鮮やかに色づいてきました。この季節、動物たちは寒い冬にそなえて、せっせと木の実を食べたり蓄えたりで大忙しでしょう。そんな秋の森でどんぐりを集めるりすのお話を、降矢ななさんが小さな子どもと一緒に楽しめる絵本に描いてくれました。

秋のある日、かあさんりすが森の中にどんぐりひろいに出かけます。落ち葉の中から「みーつけた ひとーつ」、木の根っこのそばで「みーつけた ふたーつ」、草の間に「みーつけた みーっつ」と、どんぐりを見つけてかごの中に入れていきます。ところが、「おっとっとっと」かあさんりすは木の根につまずいて、かごからどんぐりを落としてしまいました。でもまた、落としたどんぐりをひとつずつひろって、かあさんりすは子どもたちが待つ家に帰ります。

森の中、かあさんりすがどんぐりひろいに出かけ、かごいっぱいのどんぐりを拾って、子どもの待つ家に帰ってきた、というシンプルなストーリーは、はじめてお話の世界にふれる子どもたちにぴったりです。最後、子どもとおかあさんがいっしょにどんぐりを食べる場面からは、子どもたちの、おかあさんが帰ってきてうれしい、食べ物もあってうれしい、という喜びが伝わってきます。

この作品は、落ち葉の場面、草が茂る場面、石がいっぱいの場面と、ページごとに背景の風景、色合いが変わっています。ページをめくったときの印象がパッと変わっていく効果を出してみたいと、降矢ななさんが意欲的に制作されました。たしかに、ページをめくるたび、森の中のあちこちを散策しているような気分になります。
2005年に「こどものとも0.1.2.」11月号として刊行されて以来、多くの読者の方から単行本化を望む声が寄せられました。子どもたちと一緒に、ひとつひとつ指さしながら絵の中のどんぐりを探したり、食べたりして、楽しんでいただければ幸いです。秋の美しい森の風景もどうぞお楽しみください。

担当M
降矢さんは、お子さんが赤ちゃんのときに、小さなものにじーっと興味をしたことがきっかけで、「いつか絵本の中に赤ん坊を魅惑してやまない小さなものを描きたいな」と思われたそうです。

2023.10.30

  • Twitter
  • Facebook
  • Line

記事の中で紹介した本

関連記事