創立70周年記念|リレー連載「編集長が語る、福音館の本づくり。」

編集業務はじめました|編集総務室

2022年2月、福音館書店は創立70周年を迎えました。福音館書店には、刊行している書籍や雑誌(月刊絵本)、ジャンルや対象年齢によって、10の編集部があります。70周年を記念し、読者のみなさんに福音館の本により親しんでいただけるよう、リレー連載「編集長が語る、福音館の本づくり。」と題して、毎月各編集長のエッセイをお届けしてまいりました。第10回(最終回)は、契約関係の仕事をはじめ、編集にかかわるさまざまな業務を担当している「編集総務室」です。本づくりを支える仕事に、新たに「企画編集・用品制作」の仕事も加わったということで、その内容などを紹介してもらいます。

編集総務室室長 髙井信寛

みなさん、こんにちは。編集総務室の髙井と申します。

セクションの名前を見て、みなさん既にお気づきのこととは思いますが、編集総務室は純粋な編集部ではありません。名前の通り、編集に関わる様々な仕事を行っております。具体的に申しますと、著者の方々と締結する出版契約書の管理、海外で刊行された作品を日本語で翻訳出版するための契約、弊社で保管している絵本原画の貸出、弊社資料室の管理、社内で行う著作権研修等の企画運営等々、その内容は多岐にわたります。これら様々な業務に対応すべく、所属メンバーも様々なバックグラウンドを持っており、英語が堪能な者、法律に詳しい者、編集経験者、落語好き、V6推し等、多才なメンバーで、日々多様な業務に勤しんでおります。

そんな、編集総務室に、2年前新たな仕事が加わりました。それが「企画編集」と「用品制作」です。どちらも聞き慣れない言葉かと思いますので簡単に説明いたします。まず企画編集というのは、既存の作品の刊行形態を変更(大型版やポケット版など)して刊行したり、現在品切れになっている作品を、販売期間や販売部数を限定する形で復刊したりする仕事になります。現状、書店等で入手していただくことができる弊社の作品は2,000点近くございますが、諸々の理由で品切とさせていただいている作品がその何倍もございます。これら数千点の作品は、弊社にとって大変貴重な財産であると考えており、それらの作品の中から、同じテーマの作品や、同じ対象年齢の作品を組み合わせるなど、様々な切り口で復刊の企画を検討し、もう一度みなさまにお届けするというのが、企画編集の醍醐味であると考えております。過去に読んだ作品が品切れとなっており、また手にとって読んでみたいなどのご要望がございましたら、弊社ホームページ等を通じてそのご要望を是非お聞かせください。今後の復刊企画を検討する際のヒントにさせていただきます。

次に、用品制作についてご説明いたします。「用品」というのは一種の業界用語でございまして、カルタやパズル、カレンダーといった書籍以外の商品を指しております。弊社の絵本を愛読していただいたみなさまに、その絵本を題材とした用品を楽しんでいただくというのはもちろんですが、絵本を読んだことのない方に、用品という形でまず作品に触れていただき、そこから絵本を手にとっていただくというのも、用品制作の大事な目的の一つであると考えております。11月には、大人気赤ちゃん絵本『ぺんぎんたいそう』とスタイをセットにした限定商品も販売を開始致しますので、お手にとっていただけますと幸いです。

▼私のお薦め・好きな1冊。

『しょうとのおにたいじ』稲田和子 再話/川端健生 画


この絵本は、民話研究者である稲田和子さんが、広島県北部で昔話の語り部の方から直接聞いた話を元に再話した文章に、土着の信仰などを画題としてきた日本画家である川端健生さんが絵を描いた絵本です。この昔話には、赤鬼・青鬼・黒鬼の三匹の鬼が登場しますが、この鬼にはある秘密が隠されています。そして、この秘密に関して、作品中で種明かしするような記載は一切なく、私も初め読んだときにはその秘密に全く気付きませんでした。しかし、この作品を読み聞かせしてもらった子どもたちはすぐにこの秘密に気付くといいます。大人が絵本を読むと、ついついテキストに気が向いてしまい、なかなか絵の細部に目がいきませんが、読み聞かせをしてもらう子どもたちはテキストを気にする必要がないため絵の細部にまで目がいくといいます。子どもは「絵を読む」という言われ方をすることがありますが、それを初めて実感したのがこの作品です。まだ、この作品を読んだことがない方や、読んだことはあるがまだ鬼の秘密に気付いていない方は、是非誰かに読み聞かせをしてもらいながら「絵を読んで」みてください。

リレー連載「編集長が語る、福音館の本づくり。」
第1回「こどものとも第二編集部」はこちらから。
第2回「こどものとも第一編集部」はこちらから。
第3回「ちいさなかがくのとも編集部」はこちらから。
第4回「かがくのとも編集部」はこちらから。
第5回「たくさんのふしぎ編集部」はこちらから。
第6回「母の友編集部」はこちらから。
第7回「絵本編集部」はこちらから。
第8回「童話編集部」はこちらから。
第9回「科学書編集部」はこちらから。

2022.11.01

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