創立70周年記念|リレー連載「編集長が語る、福音館の本づくり。」
この世界がすてきだと感じられるように|たくさんのふしぎ編集部
2022年2月、福音館書店は創立70周年を迎えました。福音館書店には、刊行している書籍や雑誌(月刊絵本)、ジャンルや対象年齢によって、10の編集部があります。70周年を記念し、読者のみなさんに福音館の本により親しんでいただけるよう、リレー連載「編集長が語る、福音館の本づくり。」と題して、毎月各編集長のエッセイをお届けしています。
第5回は、小学生向けのノンフィクション絵本「たくさんのふしぎ」を刊行している「たくさんのふしぎ編集部」です。
この世界がすてきだと感じられるように
「オタマジャクシのときには25センチもあるのに、カエルになると6センチ前後と小さくなってしまうカエルがいる」
「サメは1本でも歯が欠けたり抜けたりすると、列ごと全ての歯が抜けて、準備されていた次の列の歯が出てくる」
いずれも若いときに著者から伺い、感心した話です。
科学絵本の編集をしていてうれしいことのひとつに、こんな思いもよらない話を聞けることがあります。社会生活を営む上ではすぐには役に立たないことが多いのですが。
たくさんのふしぎ編集部5人のメンバーが日々持ち寄る企画にも、
「日本が緑多く自然も豊かなのは、日本海の役割が大きい」
「コンクリートはローマ時代から使われていた」
と、おどろくことがいっぱい。
そんなおどろきを積み重ねてできあがっていく一冊一冊の「たくさんのふしぎ」を読んでいただければ……。
――自然界を見れば、どんな生物も次世代に命をつなごうと工夫し、それぞれが関わり合って美しい調和を保っていること。
――人の暮らしを見ても、先人たちが少しでも良くなるようにと改良を重ねた物や事に囲まれ、今の社会が成り立っていること。
を感じていただけるのではないかと思います。
子どもたちに、身近な「ふしぎ」を入り口にして、自分をとりまくこの世界が、なかなかよくできている、すてきなところだと感じていってほしい。
そんな願いを抱きながら、日々また、目の前の昆虫や植物や乗り物などに向き合い、「たくさんのふしぎ」を編集しています。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。
▼私のお薦め・好きな1冊。
『スーホの白い馬』大塚勇三 再話/赤羽末吉 画
今さら私が紹介しなくても、よく知られた優れた絵本ですが。赤羽さんの雄大な絵は、赤羽さんが若いときにモンゴルで撮影し、命がけで日本に持ち帰った写真が役だっていること。しろうまが帰ってくる場面の文章など、大塚さんの再話も見事ですが、その大塚さんは戦時中、軍隊で瀬田貞二さんに出会い、児童書に関わるようになったこと。そんなふたつの偶然が重なってこの世に生み出されたこの絵本は、奇跡そのもののように私には思えます。
リレー連載「編集長が語る、福音館の本づくり。」
第1回「こどものとも第二編集部」はこちらから。
第2回「こどものとも第一編集部」はこちらから。
第3回「ちいさなかがくのとも編集部」はこちらから。
第4回「かがくのとも編集部」はこちらから。
2022.06.01
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