イベントレポート

大好きだった絵本に込められた想いにふれる。|かこさとし展 子どもたちに伝えたかったこと@Bunkamura ザ・ミュージアム(会期終了)

「だるまちゃん」シリーズや『からすのパンやさん』、科学絵本など、生涯に600冊を超える作品を残した絵本作家かこさとしさんの大回顧展が、東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで、9月4日(日)まで開催中です。先日お邪魔したプレス内覧会から、特別に展覧会の様子をご紹介いたします。
 ※この展覧会は会期終了いたしました。

かこさとし展 子どもたちに伝えたかったこと@Bunkamura ザ・ミュージアム

今回、40タイトルを超える絵本の原画など貴重な資料が展示されている本展覧会ですが、各章で、かこさんの仕事と人生を振り返り、かこさんが未来に残し、子どもたちに伝えたかった想いをひもとく構成になっています。


冒頭に展示されているのは、かこさんが若き日に描いた油彩画や、戦後に出会った「セツルメント活動(※戦前に始まったボランティア活動。医療・福祉などの支援のほか、子ども会の活動もあった)」時代の紙芝居などの貴重な資料です。特に、セツルメント活動では、子どもたちは「面白ければ目を輝かせ、つまらなければそっぽを向いてしまう」ことを肌で感じ、「大切なことは子どもたちが教えてくれた」と思うまでになりました。まさに、かこさんの創作の原点が感じられる内容となっています。



続いて、絵本のコーナーでは、1967年に出版されたシリーズ第1作『だるまちゃんとてんぐちゃん』をはじめ、未来社会を舞台にした『だるまちゃんとかみなりちゃん』(1968年)など人気シリーズ全11作の原画がずらりと並び、丁寧に描きこまれた細部をじっくり見ることができます。また、セツルメント時代に制作した、かみなりを主人公にした紙芝居も展示され、「てんぐやかみなりという日本で馴染みの深いキャラクターを通じて、日本の子どもたちに日本らしい物語を届けたい」という、かこさんの想いが伝わってきます。ほかに、偕成社さんから出版されている人気絵本『からすのパンやさん』の原画もあって、ファンには嬉しいところです。


かこさんの絵本の仕事は、600冊超という作品数もさることながら、そのジャンルの幅広さも特徴です。絵本デビュー作となる『だむのおじさんたち』(1959年)、断面図の技法をうまく用いた『だんめんず』(1973年)や『地下鉄のできるまで』(1987年)、鳥瞰的に描くことで物事の本質を表現した『かわ』(1962年)など、「自然」や「科学」、「身体」といった工学博士ならではというものから、70年代に出版され今も根強い人気の「ことばのべんきょう」シリーズをはじめとする、「ことば」「遊び」などの分野まで、子どもの文化に深い理解と関心を寄せたかこさんの、幅広い仕事を知ることができます。


そして最後を飾るのは、最晩年に描き残された未完の大作「宇宙進化地球生命変遷放散総合図譜(通称:生命図譜)」の下書き(複製)です。幅5メートルに及ぶ巨大な図譜には、ビックバンに始まる宇宙の歴史と、生命の誕生と進化が細かく描きこまれ、思わず圧倒されます。図譜に込めた思いについて、かこさんは「今後どういうふうな未来になるのか、どなたにもわからないのですが、これまでの変遷をしっかりと見極めることで、将来、未来性も、ちゃんと出てくるだろう」とインタビューで述べています(公式図録『かこさとし 子どもたちに伝えたかったこと』より)。もしかしたら、ここには、先行きがわからない現代を生きる子どもたち、大人たちへのかこさんからのエールが込められているのかもしれません。


ここまで、「かこさとし展 子どもたちに伝えたかったこと」をご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか? 展示の最後には、『からすのパンやさん』のフォトスポットと、グッズや絵本の販売コーナーもあります。こちらもぜひお立ち寄りくださいね。

日々、かこさんの絵本に親しんでいるお子さんたち、またかつて親しんでいたという大人の方にも、ぜひ見ていただきたい展覧会です。夏休みのこの機会に、どうぞ足をお運びください!

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「かこさとし展 子どもたちに伝えたかったこと」
会期:2022年7月16日(土) - 9月4日(日)
 ※この展覧会は、会期終了いたしました。
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
   〒150-8507 東京都渋谷区道玄坂2-24-1 B1F
開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
夜間開館:毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
※会期中のすべての土日祝および8月29日(月)~9月4日(日)は一部オンラインによる入場日時予約が必要です。
休館日:7/26(火)
入館料:一般 1,400円、大学生 800円、高校・中学生500円、小学生以下 無料
HP:https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_kako/

2022.08.11

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