ちょっと強面だけど、茶目っ気たっぷり『わにわにのおふろ』
『わにわにのおふろ』
わにわには おふろが だいすきです。
『わにわにのおふろ』は、こんな一文からはじまります。大きな口からのぞく白い歯、こちらを見据えるような鋭い眼。ちょっと不気味で、強面のワニのわにわにがおふろ場にやってきます。
蛇口をひねってお湯を入れ、おふろによじのぼって、「じょろろーん!」。お湯につかって、大好きなおもちゃで遊びます。
せっけんのあぶくをとばして遊んだあとは、なんとシャワーをマイクに歌までうたいます。「うり うり うり うり オーイェー!」。さいごに、お湯にもぐって、じーっとあたたまります。
おふろから出ると、タオルで体をふきます。「ぐにっ ぐにっ ぐなっ ぐなっ」。そして、わにわにはおふろ場から出ていきました……。
おふろを心ゆくまで楽しむわにわにの姿は、どこか無邪気で、天真爛漫な子どものようにも見えます。2000年に「こどものとも年少版」で刊行されたとき、「子どもたちが熱狂しています!」というおたよりが編集部に続々と寄せられたというエピソードにも納得がいきます。わにわにが、自分がやってみたいことを、堂々と大胆に、のびのび楽しんでやっているからでしょう。
絵本『わにわにのおふろ』誕生のそもそものきっかけは、作者の小風さちさんが、練馬区石神井公園の池でワニの目撃情報があったという通称「ワニ騒動」で、ワニを探しに行ったこと。その後、テレビで「伊豆の熱川バナナワニ園でワニの引っ越しがありました」というニュースを見聞きし、早速バナナワニ園へ。そこで間近に見たワニにいたく感動し、『わにわにのおふろ』が生まれました。
このお話にさらに息を吹き込んでくださったのは、画家の山口マオさん。木版画の力強い線で描かれた迫力あるわにわにの世界が誕生しました。茶目っ気とユーモアをたっぷり感じさせながら、ちょっと不気味さを漂わせているところがワニの存在感を増しています。
さらに、お話の世界を生き生きと立ち上がらせているのは、小風さんの紡ぎだす音、オノマトペにあります。「きゅるり きゅるり きゅるり」「ぽくん ぽくん ぷくん」「ずる ずり ずる ずり」。小風さんならではの独特の語感で、声に出して読むと本当にわにわにがその場にいるように感じられます。
「わにわに」のシリーズは、ほかにも『わにわにのごちそう』、『わにわにのおでかけ』、『わにわにのおおけが』、『わにわにとあかわに』、それから『わにわにのかるた』があります。
それぞれの作品ごとに、また違った魅力があるわにわにの世界を親子でぜひお楽しみください。
担当M 『わにわにのおふろ』で好きな場面は、わにわにがピンクの洗面器をかぶってうたうところです!
2022.05.13