学校図書館だより

【エッセイ】私が思う学校図書館 |村上恭子さん

vol.1 学校司書の役割って?

村上恭子

2014年、学校司書という名称が、初めて正式に使われるようになりました。学校司書の専門性が謳われ、そのための養成カリキュラムも作られました。今日本全国の小中学校図書館に、「学校司書」が配置され始めています。

残念なのは、専門性のある人の配置を謳っているにも関わらず、そのための予算は十分ではなく、多くが非常勤職員であり、週2~3日の時短勤務、複数校の掛け持ち、経験を積んでも5年の雇い止め……といった厳しい現状にあることです。それでも働き続けている人たちがいるのは、「本」が好きで、「本」と「人」をつなぐ仕事にやりがいを感じ、「本」と「人」が集う「学校図書館」というざわめきのある場に限りなく愛着を感じているからだと思います。

学校図書館は、子どもたちにとっていちばん身近な図書館です。入学前の読書環境は違っても、たくさんの魅力ある本があり、本の面白さを伝えてくれる人がいる、居心地のいい学校図書館で、豊かな読書経験を重ねることができます。自分がどんな本が好きなのか、どんなことに興味を持っているのか、たくさんの本に出会うことで気づくことができます。

学校司書は、一人ひとりの好みにあった本を魔法使いのように出せる存在ではありません。でも、利用者のことを考えながら選書をし、レファレンスに応えるために本を探し、新刊状況に目を光らせ、本を知るために本を読む日々を積み重ね、少しずつ本の専門家になっていきます。

本を選ぶことは楽しくもあり、難しくもあります。読み継がれてきたロングセラーは、司書にとって強い味方です。時代を経ても生き残ってきただけの力があるからです。同時に評価の定まらない旬の本も、図書館には必需品です。

迷うことはあっても、目の前の利用者である先生や子どもたちの生の声を聞きながら、使える棚をつくり続けること。結果、ここは自分たちの図書館だと思ってもらえることが、私の仕事の原動力だったのかもしれません。

vol.2 常駐する学校司書の仕事を 見える化したい!


2009年、東京学芸大学学校図書館運営専門委員会では、文科省事業の一環として、「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」という長い名前のコンテンツを立ち上げました。そもそもの発端は、「レファレンス協同データ」にヒントを得て、教育系附属学校ならではの指導案付きで学校図書館活用事例のデータベースを作ってはどうかというアイデアをいただいたことです。

東京学芸大学附属学校には、幼稚園と特別支援学校をのぞき、非常勤ながら、専任の学校司書が勤務しています。小学校の多くは、図書の時間と称して「国語」での利用が多いかもしれませんが、中学・高校では、授業で活用されないと、本好きな生徒だけが利用する場になりかねません。授業利用が、一般利用を喚起することも多々あります。だからこそ、このデータベースは先生がたをターゲットにしたのです。

けれども、そこにもうひとつ、大きな目的を掲げました。それは、常駐する学校司書の仕事を見せていくことです。それが毎月更新している「学校図書館の日常」です。実践事例が、学びのなかで子どもたちに本の価値に気づいてもらうことであるとすれば、「学校図書館の日常」で見せているのは、学校司書による子どもと本を結ぶ手だてと言えるかもしれません。

開設して10年。日々のアクセスも増え、少しずつ全国の学校司書さんたちに頼られる存在に成長してきていることを、嬉しく感じるこの頃です。

村上恭子(むらかみ・きょうこ)
茨城県生まれ。1979年より、東京学芸大学附属世田谷中学校司書として勤務。学校図書館問題研究会会員。2009年より東京学芸大学学校図書館運営専門委員会として立ち上げた「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」の運営に関わる。
また、2010年より、東京学芸大学公開講座「学校司書入門講座・応用講座」を大学教員、附属学校司書と共に運営。共著に『先生と司書が選んだ調べるための本』(少年写真新聞社 2008年)、『鍛えよう!読むチカラ』(明治書院 2012年)、単著に『学校図書館に司書がいたら;中学生の豊かな学びを支えるために』(少年写真新聞社 2014年)などがある。

「2020年度岩波書店・福音館書店 児童図書目録図書館用」より転載

2020.06.15

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