学校図書館だより

【エッセイ】効果あり!図書館司書の学校訪問ブックトーク

効果あり!図書館司書の学校訪問ブックトーク

代田 知子

三芳町では、 町立図書館司書が小中学校でブックトーク授業をしている。 小学校は、 全5校で特別支援学級を含む全学年全クラスに実施。 中学校は、 3校中2校に実施している。 今は司書5人で担当学年を振り分けている。 私や主任司書が選書の相談や練習に立ち会い、その上で学校に出向く。
各校に一人ずつ学校司書がいるのになぜ図書館司書が?とよく聞かれる。 でも、ブックトークを見たことがないまま着任する学校司書がとても多いのだ。 子どもとのやり取りがある図書館司書のブックトークを見学することこそ、 彼らの格好の研修になる。
実は、 三芳町立図書館の学校訪問ブックトークには、 ある歴史がある。 はじめて学校でブックトークを行ったのは1992年。町が試行的に学校司書を導入した1996年4年前だ。当時、 小中学生の来館が少ないので、何とか図書館に小中学生を呼び込みたいと、 私ともう一人の児童担当司書とで考えた図書館PR作戦が、 学校訪問ブックトークだった。 必死に声をかけ、やっとある小学校の1.2年生から依頼が来た。 1学年合同でと言われたが少人数の方が効果が出るから1クラスごとにやらせてほしいとお願いした。
「楽しくて、 ついつい読みたくなるブックトークを目指そう!」 と決め、 許諾を得て作ったぐりとぐらの手袋人形で子どもたちに挨拶してから 「ぐりとぐら」(なかがわりえこ作  おおむらゆりこ絵 福音館書店) を読んだ。 ほかの本も工夫を凝らして紹介した。 子どもも教師もブックトークは初体験。 興味津々で校長先生ものぞきに来た。 結果は大成功!図書館に「会いに来たよ!」「あの本はどこ?」と親子で来てくれた。 教師の口コミで学校からの依頼が年々増えた。
ある日、司書の私が教育委員会に用足しに行くと、教育長に 「学校でのブックトークが評判だが、子どもの様子を聞かせて」 と呼び止められた。 せっせと学校教育課あてに出していた報告文書 (実践の写真付き) を読んでくれていたのだ。 話の中で私は、 「図書館が出向くブックトークは、各クラス年1回が限度だが、 学校司書がいる自治体では日常的に学校司書が行っている」とお伝えした。 教育長は、 調べてみようと言ってくださった。
やがて1996年に1小学校に試行的に、1998年には小中学校全校に学校司書が配置された。 子どもの読書意欲を喚起させるブックトークを、 まずは町立図書館がやって見せ、その効果を実感した教師が声を上げてくれた。 その成果だと思う。
今年私は、 中学1年生へのブックトーク 「大切なものは?」 で、 「半分のふるさと」 (イサンクム著  帆足次郎画 福音館書店)などと一緒に 「スーホの白い馬(大塚勇三再話 赤羽末吉画 福音館書店)を読んだ。 すると、 「スーホ」と聞いた生徒たちが 「わー!」 「懐かしい!」と歓声を上げたのだ! しかも読み始めるとシーンと聞き入る。 小学校教科書で出会ったこの作品が中学生の心にこんなにも残っている。 こんな体験ができるからブックトークはやめられない。

代田 知子
埼玉県三芳町立図書館運営相談員(元館長)
JBBY副会長/日本子どもの本研究会会長

2023.12.11

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