学校図書館だより

【エッセイ】学校図書館でお話会を

学校図書館でお話会を

杉山 亮

学校司書の仕事は大きく二つに分かれる。 本好きな子たちにさらなる喜びを提供する事と本に興味がない子に本の喜びを伝える事だ。
前者はたぶん司書の得意分野。 そもそも司書は本好きがなる仕事だから自分の子ども時代を思い出して楽しくやれる。
難しいのは後者。 たいていは本がすらすら読める子だった司書には 「読めない」というのがどういう事かわかりにくいものだし、そもそも図書館に来ない子に図書館の中からなにができるのか?
でも、学校司書とは本が子どもの今と未来のためにいいものだと思う大多数の大人たちから任された、子どもと本を結ぶ仕事だ。 がんばりどころだし、また、司書がここをがんばらなければ図書館・書店 出版社の未来もない。
そこで提案したいのがお話会を開くことだ。
パソコンになぞらえるとわかりやすいが、本はハードで物語はソフト。
本はそれだけでは物語をいれるいれものにすぎない。
だからいくら 「本はいい、本を読め」と言っても中の物語をおもしろいと思っていない子には本は小さな字の羅列ばかりのつらいものだ。
でも、面白い物語を読んでもらった事がある子なら、 自分で本の中の字を読めばいつでも物語の楽しい世界に行けるんだと気づき、自ら本を開くことになるかもしれない。
もちろんすべて可能性の問題だがこれが王道だ。
だからまず物語というソフトを耳から届けるために図書館の中で司書やボランティアの親が絵本や紙芝居を読む会を定期的に開いてほしい。
前もって校舎のどこかにポスターを貼っておけば、ふだん図書館に来ない子もクラスメイトに誘われて来るかもしれない。
そしてこれが大事なのだがそれとは別に年に一度くらいはぜひ、 学年や全校規模のお話会を持ってもらうよう、 先生方に働きかけてほしい。
みんなが一緒に聞くと満員の映画館で映画を観るような幸福感が生まれる。
聞きなれていない子も、すでに聞き上手になっている子といっしょに聞くと、まきこまれて、しだいに自分勝手なチャチャは減り、 おもしろがれるようになっていく。
周囲の子に誘われて笑う中で (ここがおもしろいとこだ)とか(こういうのがおしゃれってことか)とかがわかってくるのだ。
それこそ同年齢の子たちがいっしょに学び、支えあって進んでいく学校というものの本質を体現できる。
本とお話会は地続き。
あちこちの小学校に呼ばれて物語ライブを重ねてきた者としての実感だ。

杉山 亮
児童書作家/ストーリーテラー

2023.07.11

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