『ごぶごぶ ごぼごぼ』の駒形克己さん|音のことば
『ごぶごぶ ごぼごぼ』は、鮮やかな色と明快な形、そして様々な音で構成された赤ちゃん絵本です。作者の駒形克己さんは、「音はときに言葉以上にその表現を豊かにします」と語っています。音、ことば、声。それぞれが絡みあいながら、赤ちゃんの耳に届くとき、そこには一体どんな世界が生まれるのでしょうか。
音のことば
駒形克己
朝は、あれほどサンサンとお日さまの光にあふれていたのに、午後になってポツリと降りはじめた雨が、どしゃぶりの雨になった。犬はバシャバシャ、猫はピチャピチャと歩き、傘の中はボトボトボトとたくさんの音。時々バシャーンと通り過ぎていく車にも気を付けながら、雨の中をトボトボと歩く。夜になって、雨はうそのようにピタッとやみ、やがて雪がシンシンと降りはじめた。
音は、時には言葉以上にその表現を豊かにします。軽やかに、あるいはゆっくりと私たちを想像の世界に引込みます。またそれらの音を声として発する時、擬声語や擬音語となってその人なりの音となり、言葉になります。この絵本では、やさしい音や強い音、小さな音や大きな音をたくさん集めました。それらがお母さんやお父さんの声となって、子どもたちに伝わっていきます。楽しく抑揚をつけながら、時にはリズミカルに。単純な形と色による、とても抽象的な世界だけに想像力が発揮されます。
絵本は、子どもの反応を確かめながらゆっくりと進むことができます。立ち止まってみたり、戻ってみたり……。こうした体験を通してお互いの気持ちが伝わり、コミュニケーションが育まれます。
おなかの中の赤ちゃんは、八か月頃にはすでに聴覚機能が備わっていると言われています。いったいどんな音なのでしょうね。水の中に潜った時のあの感じでしょうか?
ごぶごぶ、ごぼごぼ……。
この本に集められたさまざまな音が、いろいろな声となって、子どもたちに届けられることを願っています。
駒形克己(こまがた・かつみ)
1953年静岡県生まれ。日本デザインセンターを経て、1977年渡米。ニューヨークCBS本社、シェクターグループなどでCIデザイン、グラフィックデザインを手掛け、1983年帰国。1986年ONE STROKE設立。以後多数の絵本を出版。1990年ニューヨークMoMAミュージアムショップでの発売を機にその活動は世界へと広がり、1994年フランスリヨンを皮切りに本の個展、ワークショップ活動を開始、現在もなお世界各地を巡回中。2012 年手話絵本を制作し、その翌年、 手話絵本の制作過程に密着した駒形克己ドキュメンタリー番組がWOWOWプライムにて放送された。(同番組が国際エミー賞にノミネート) パリ PRIZE FOR CREATIVITY、2002年スイス国際児童図書賞、2006・2007年GOOD DESIGN賞、2000年・2010年・2016年 ボローニャRAGAZZI賞 優秀賞、他受賞多数。
2019.02.21