11月26日 元永定正さん|色とかたちの魔術師
月に1回、その月にお誕生日を迎える作家・画家とその作品をご紹介する「絵本作家の誕生日」。11月26日は、鮮やかな抽象画で絵本に新たな風を吹き込んだ、元永定正さん(1922年-2011年)のお誕生日です。
色とかたちの魔術師
元永定正さん(1922年11月26日生まれ)
小さな色玉たちが、ころころころところがっていく絵本、『ころ ころ ころ』。がちゃがちゃ、どんどん、かーんかーん、ざあー……。いろいろな音を、シンプルなかたちと鮮明な色で表現した『がちゃがちゃ どんどん』。ジャズ・ピアニスト山下洋輔さんが音を表現したユニークな言葉に、摩訶不思議な絵が共鳴した『もけら もけら』。
元永さんの絵本に共通する特徴は、鮮やかな「色」とユニークな「かたち」。 まず、目に飛び込んでくる表紙を見て、「一体どんな内容なのだろう」 と、興味をひかれます。絵本をひらくと、想像を超えた斬新さに驚かれることでしょう。でも、そこで終わらないのが元永さんの作品。子どもに読んであげると、びっくりするくらい喜ぶのです! まるで命が宿っているかのようなカラフルで不思議な「かたち」と、リズミカルな音の響きが、子どもたちの感性を刺激するのでしょうか。子どもたちが心の底から楽しんでいる姿を目の当たりにして、大人たちは元永さんの絵本のすごさを再確認することもあるようです。
斬新な絵本を次々と作りだした元永さんは、日本を代表するモダンアートの作家として、絵画、立体、版画、パフォーマンス、パブリックアートなど、国際的に活躍しました。
しかし、若い頃は、国鉄の鉄道員や郵便局、材木会社、新聞の営業マンなど、様々な仕事に就く傍ら、漫画や絵画を描き続けたそうです。本格的に絵画制作に打ち込むまでには、長い道のりでしたが、抽象画に目覚めた元永さんの作品は、誰もやっていない新しさで評価されました。
「既存の芸術にこだわらず、面白いからと挑戦していると、そのときは抵抗を受けるけども、後で考えたら、それが新しいアートが誕生する瞬間やったと言うわけやな。そやから僕はいつも『アートはあーとで考えましょ』と言うんです」と「母の友」(2007年2月号)のインタビューで語った元永さん。常に新しい発想をと考え続け、「遊びの精神」を大切にしながら描き続けた絵本は、頭で考えるのでなく、目と耳と心で感じて、子どもたちと一緒に楽しんでください。
元永さんの絵本は他に、谷川俊太郎さんとのコラボレーションで絵本の世界に新風を吹き込んだ『もこ もこもこ』(文研出版 刊)、世界中の民族の言葉と創作の言葉の響きにかたちを与えた『カニ ツンツン』、大きなかたちと小さなかたちのくり返しが楽しい『おおきい ちいさい』などがあります。
元永定正さんの作品は、こちらからご覧ください。
2018.11.22