日々の絵本と読みもの

草花の特徴を見事にとらえた、美しい刺繍絵本『ざっそうの名前』

『ざっそうの名前』

7月も後半に入り、だんだんと蒸し暑くなってきました。あまりすっきりしない空模様のこの時期ですが、ふと足下をみてみると、道ばたのいたる所に雑草が青々と生えてきています。どの草も元気に生い茂って、夏の太陽を心待ちにしているかのようです。

一見どれも同じに見えてしまう雑草ですが、たくさんの種類があり、それぞれがちゃんと名前を持っています。『ざっそうの名前』は、何気なく目にしている草花の魅力を存分に紹介している絵本です。

夏のまっさかり、おじいちゃんの家にあそびにいった太郎くんは、庭で、きれいな花をみつけます。「あれは、ヒメジョオンっていう花だよ」おじいちゃんが名前をおしえてくれたその花は、誰が種子をまいたわけでもないのに、いつのまにか生えてきた雑草の花でした。

「どの草にも、みんな名前があるんだよ」おじいちゃんは、庭にはえている雑草の名前をひとつずつ教えてくれます。
「太郎、コニシキソウとハキダメギクとチドメグサだ」
「え、チドメグサ? 面白い名前」

他にも、強烈なにおいのする草や、名前に動物の名称が含まれているものなど個性豊かです。そして雑草たちには、それぞれよく似合った名前がついていました。

雑草が主役の絵本は他にもありますが、この作品の驚くべき特徴は、絵が全て作者の長尾玲子さんによる刺繍で描かれているという点です。一針一針、丁寧に糸で描かれた何十種もの雑草には、素朴な温かみが感じられ、生命力にあふれた美しさも味わうことができます。

絵本でその形と名前を味わったら、今度は道端の雑草に目が行くことでしょう。そんな出会いが、夏の散歩に新たな楽しみを与えてくれることうけあいです。

担当・H
雨の日の通園は大変ですが、子どもは楽しそうです。
絵本にも登場するオオバコが育つのを見ながら、晴れた日にオオバコ相撲をするのを楽しみにしています。

2020.07.15

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