「ちょっと むりじゃないですか」イノシシも手袋の中に……ウクライナ民話『てぶくろ』
「ちょっと むりじゃないですか」イノシシも手袋の中に……
『てぶくろ』
2019年は亥年です。というわけで本日はイノシシが登場する絵本『てぶくろ』をご紹介します。1951年に旧ソビエト連邦で出版され、日本では1965年に翻訳出版された『てぶくろ』。親子3代で楽しんでくださっている方も多いのではないでしょうか。
雪の森でおじいさんが落としてしまったあたたかそうな手袋。ネズミ、カエル、ウサギ、キツネ、オオカミが次々と住み着き、手袋はさながら小さな家のようになりました。そこに「ふるん ふるん ふるん。だれだね、てぶくろに すんでいるのは?」と、ステッキ片手に帽子をかぶって登場したのは「きばもちいのしし」。
「わたしも いれてくれ」と、先住の動物たちにお願いすると「ちょっと むりじゃないですか」と言われてしまいます。ところが、きばもちいのししは「いや、どうしても はいってみせる」と言って入りこみ、手袋はぎゅうぎゅう詰めに……。さらにはクマまでも住みついてしまい、いよいよ手袋ははじけそう! 住居のように巨大化し、だんだんと縫い目がほころびていく手袋のリアルな描写は見事です。
ページをめくるごとに、どんどん動物たちが入り込む手袋に違和感を覚えず、物語を楽しめるところが、この絵本の魔法なのではないでしょうか。凍えそうな雪原に落ちた手袋に、みんなでぎゅうぎゅう詰めに入ったら、きっと暖かいことでしょうね。楽しい想像が広がるこの絵本が、いつの時代でも変わらず愛され続けているのもうなずけます。
「日々の絵本」月曜担当・H
入社15年目。舞台鑑賞が好きです。子連れで楽しめる作品を中心に月2~3本鑑賞しています。
2019.01.07