くまさん
愛らしい姿に、実直な働きぶり、日々の暮らしを丁寧に営む様子が人気の「くまさん」シリーズ。『せきたんやのくまさん』『ゆうびんやのくまさん』『パンやのくまさん』『うえきやのくまさん』の4作に、新しく『ボートやのくまさん』『しょうぼうしのくまさん』の2作が加わり、シリーズは全部で6作になりました。それぞれの絵本で、違ったくまさんの暮らし・世界観を描いていますが、全作に共通する魅力も。たっぷりご紹介します。
くまさんについて
『パンやのくまさん』では、朝とても早く起きて、大きなかまどでパンやパイ、お誕生のケーキを焼き、車で売りにいきます。パン屋、石炭屋、郵便屋などなど、いろいろな仕事をするくまさんですが、どの仕事も淡々と、きっちりこなす働きぶりは清々しく、自分の仕事に誇りを持って働いていることが伝わってきます。そして、くまさんの仕事はいつも、だれかを喜ばせます。しかも、働いたら、ちゃんとお金をもらいます。「働く」ということの充実感、そしてそれが生活の糧になるということまで描かれているのです。子どもたちは、ぬいぐるみのような小さなくまさんに自分を重ねつつも、そんな”働く姿”に憧れを持つのではないでしょうか。
くまさんが一人の生活者として暮らす様子が見えてくるのも大きな魅力。『ゆうびんやのくまさん』では、まだ明けきらない朝、赤い寝間着を来たまま、玄関のドアを開け、配達された牛乳を取ろうとしています。テーブルには、朝ごはんでしょうか、「SUN FLAKES」と書かれたシリアルが。絵本によって、くまさんの住んでいるお家は違いますが、どの作品でも、”朝起きて、働いて、夜、ご飯を食べて眠りにつく”というシンプルな一日が描かれます。一日一日を丁寧に暮らすくまさんの姿に、こんな風に日々を過ごしていけたらいいなと、日常の愛おしさをあらためて感じさせてくれます。
細部まで丹念に描きこまれたお家の様子には、絵本の文章には書かれていない”物語”がひそんでいます。『せきたんやのくまさん』では、一日働いて帰ってくると、暖炉の前で自分のために淹れたお茶を飲み、絵本を読んでゆったりとした時間を過ごします。寝室は2階。階段の壁に、親子らしい3人のくまさんの写真が掛けられているのを、幼い読者たちはきっと見逃さないでしょう。横に掛けられた大きな2着のコートは一体だれのもの? 絵本の文章では語られない部分にも、想像をめぐらせたくなります。
登場人物
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せきたんやのくまさん
石炭を荷馬車で運んで、売りにいきます。石炭置き場に石炭の袋をどかん! どかん! と投げ込んでいく手際の良さに、熟練の腕前を感じます。
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パンやのくまさん
朝早く起きて、パンを焼き、車で移動販売もします。お店に来た子どもたちには、特別の缶に入ったキャンデーをあげる優しさも。
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ゆうびんやのくまさん
雪の日も、配達に出かけます。ほどけかかった小包を、紙と紐で丁寧に包み直す細やかな仕事ぶり。
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うえきやのくまさん
お庭の手入れをしたり、野菜を育てて売ったりします。これまで「たったひとり」で暮らしていたくまさんですが、今作では白猫と暮らしています。
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ボートやのくまさん
ボートの家に妹のスージーと暮らしています。干し草や石炭など、いろいろなものをボートに載せて運河を行き来します。
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しょうぼうしのくまさん
町の人を助けるために、いつでも一生懸命がんばります。毎朝の消防車の点検はかかせません。
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妹のスージー
『ボートやのくまさん』に登場する妹のスージー。夜寝る前に、くまさんの笛に合わせて、「きらきらぼし」や「ポリー、やかんをひにかけて」などの歌をうたいます。
とじる
作者フィービ・ウォージントンについて
1910年イングランド・ランカシャー州うまれ。リヴァプールで秘書として働いたのち、1947年から幼稚園教諭として働く。1948年、きょうだいのセルビとともに最初の本『せきたんやのくまさん』を制作。セルビの息子の持っていたぬいぐるみのくまがきっかけで物語が生まれた。その後、結婚し、家庭生活がひと段落したのちの1977年にふたたび絵を描きはじめ、パンや、ゆうびんや、うえきやと続くくまさんシリーズを完成させ、出版。