小さいころから『ナルニア』『メアリー・ポピンズ』などのファンタジーが好きだった私は、高楼方子さんが登場されたとき、日本ファンタジーのすばらしい書き手の可能性が、とうれしく思いました。日本の「ファンタジー」を書こうとされた方は初期のころは物語の仕立て方がイギリスファンタジーの影響を強くうけておられて、高楼さんもその例にもれなかったと思います。けれど、キリスト教の神との葛藤のない日本ではイギリス風をそのまま模倣しても、何かそぐわないものは、書く方も読む方も感じていたと思います。そして今では、書く方みなさんが、それぞれ独自の作風を作られ、すばらしい日本ファンタジーがたくさん生まれました。高楼さんにもとても期待していましたが、この作品は、本当に満足のため息が出ました。いえ、たぶん高楼さんは、この作品をあえて「ファンタジー」と意識して書かれたのではないかもしれませんが。この作品の良さは、三人の、少し「はずれた」ところのある少女たちが、あっというまにお互いを理解者と認め、楽しい仲間になる、というところで、その「気の合いかげん」「楽しい遊び」が具体的に書かれているのがすぐれたところと思います。しかも、互いに、会話を通して、気持ちのよさを学ぶ、というところが、新鮮なのです。なにしろ、何かあると、メールで「死ね」と互いに言い合うご時世ですから・・・。(ちなみに、この少女たちは、携帯は持っていません)そんな三人に、「仲のいい三人の少女がそれを見たらかならず仲たがいして永遠に別れてしまう」というジンクスがふりかかってきます。そこには、過去の悲劇を思わせる、やさしい茶色の目の青年の謎もかかわり、はたして、三人はどうなるのか、三人をいとおしみながら、楽しみに読みました。それにしても、三人を最初に結びつけたきっかけが「小公女」なのですから、やっぱり高楼さんは、まだイギリス児童文学への愛が残っているんだなあと思わされました。
基本情報
- カテゴリ
- 読みもの
- ページ数
- 380ページ
- サイズ
- 21×16cm
- 初版年月日
- 2007年07月15日
- シリーズ
- 福音館創作童話
- ISBN
- 978-4-8340-2289-6
- テーマ
- 6年生におすすめの本/小学中学年からの読みもの
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