絵本から童話へのかけはし

子どものあそびの世界がのびのびと描かれた『もりのへなそうる』

福音館書店の子育て中の社員が、子どもたちと幼年童話を楽しむ様子をつづる「絵本から童話へのかけはし」連載、第3回目は、『もりのへなそうる』。

『もりのへなそうる』

小学1年生になった娘は、本を読んでもらうのが大好きで、寝る前に親から本を読んでもらう「ねんねの本」の時間が、毎日欠かせません。そんな娘のお気に入りの幼年童話『もりのへなそうる』の魅力を、娘と父親にインタビューしてみました。

——ふゆちゃん、今日の「ねんねの本」はなんにしましたか?
「『もりのへなそうる』にします!」

『もりのへなそうる』は、『エルマーのぼうけん』を翻訳したわたなべしげおさんの作、『ぐりとぐら』の絵を描いたやまわきゆりこさんの挿絵による幼年童話で、1971年から長く親しまれています。
登場するのは、ふたりの兄弟。てつたくんは5歳で、楽しいあそびをリードするたのもしいお兄ちゃんです。みつやくんは3歳で、てつたくんの真似をするけれどいつもちょっと間違えてしまう、かわいい弟です。ふたりは、森でたからさがしをしていているときに大きなしまもようの卵を見つけました。それはへんてこなかいじゅう、「へなそうる」の卵だったのです。ふたりは、卵からかえったへなそうるといっしょに、森であそびはじめます。


——ふゆちゃんは、このお話のどんなところがすきですか?
「それはもちろんへなそうるだよ! いろいろなことがあって、へなそうるがいろんなことを言うのがおもしろい。へなそうる語みたいなのがあって、自分のことを『ぼか』と言うところとか、かにさされたのに『かににさされた』って間違えるとことかが、とってもおもしろい!」

そう、この「へなそうる」のキャラクターが、なんともユーモラスですてきなのです。子どもらしいわがままを言ったり、言い間違えをしたりするのですが、それがとても自然に描かれ、読者の子どもたちも「わかる~!」とか、「(ちょっと年上気分で)こんなことするなんておかしいよ~!」と思えるのですね。

「それから、かににはさまれちゃったと思って、ぐへー!と言うところもとってもおもしろい! リュックサックがぬけなくなったところもおもしろい!」


へなそうるが、てつたくんとみつやくんのおにぎりをもっと食べたくて、リュックサックにくびをつっこんでにおいをかいでいるうちにぬけなくなる場面はこちらです。てつたくんとみつやくんがそれを見て「うへっうへっうへっうへっ」と笑うところでは、ふゆちゃんもいっしょに「うへっうへっうへっうへっ」と笑っています。

——どんな子どもにおすすめしたいですか?
「おもしろいところばっかりだから、すぐ笑っちゃう子におすすめしたい!」

——それでは、次にパパにも聞いてみましょう。最近、娘のパパ離れをさびしく思っていて、「ねんねの本」の時間を大切にしてしているそうですね。あなたにとって、『もりのへなそうる』の魅力はなんですか?
「読むととにかく娘が笑うね。へなそうるが『うひゃー』とか言うところだけでゲラゲラ笑ってる。いろいろな童話のなかでも特に笑っていて、読んでいてうれしい気持ちになる。読んだ後は「パパそうる♡」「ふゆそうる♡」と呼び合って仲良くなれる。へなそうるありがとう、と思ってる。」

——読むときの自分なりのこだわりはありますか?
「『うひゃあ!』『ぐへー!』とかはすごく喜ぶからおのずと力がはいる。」

さいごに、私としては、てつたくんとみつやくんの兄弟のやりとりが、我が家の6歳と2歳の姉妹の様子と重なって見えて、それもほほえましく思います。上の子が「たんけんにしゅっぱつ!」といさましく言うと、下の子もうれしそうに「しゅっぱちゅ!」と応えてついていく、なんとも楽しそうな姿。このご時世で本当の森に行くことができなくても、近くの公園の草むらでだって「森のたんけん」はできるし、家のベッドでだって「海のたんけん」はできる。子どもの想像力っていいなあと思います。
子どものあそびの世界がのびのびと描かれた『もりのへなそうる』、ぜひお楽しみください。

書籍編集・K
入社16年。てつやくんとみつやくんのお母さんのすてきなおべんとうセンスをみならいたいです。

2021.07.26

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