『工作図鑑』きうちかつ先生の夏休みおもちゃ創作教室|夏の3331こども芸術学校 2019 @アーツ千代田 3331
福音館の社員が参加したイベントのご報告をするこちらのコーナー。今回は、7月20日にアーツ千代田 3331(東京・千代田区)で行われた、絵本・造形作家 きうちかつ さんのワークショップのレポートです。『工作図鑑』をはじめとして、子どもたちが実際に手を動かしながら楽しむ、遊びや工作についての著書も多い きうちさん。午前・午後の2部構成のワークショップの、午前の部を取材させていただきました。
『工作図鑑』きうちかつ先生の夏休みおもちゃ創作教室
夏の3331こども芸術学校 2019 @アーツ千代田 3331
ワークショップ当日は、あいにくの雨。それでも、会場に入ってきた子どもたちは、広々とした部屋の中をかけまわり、元気いっぱいの様子です! そんな中、何人かの子どもたちが、会場の隅にあるテーブルの上に、何やら四角いものがあるのを見つけて集まってきました。その正体は、牛乳パックの「底」でできた、コマ。白と黒の模様が描かれているコマを回すと…あら不思議! そこにないはずの色が見えてきます。
時間になると、きうちさんの呼びかけで、子どもたちが部屋の中央に集まります。
「まずは、お母さん、お父さんに手をふりましょう! はい、さようなら〜」
子どもたちがワークショップを存分に楽しめるよう、ここで保護者の方とは一旦おわかれ。自分たちの好きなように工作に集中できるように、子どもたちだけの環境を作ります。
保護者の方々が名残惜しそうに退場されると、きうちさんの自己紹介が始まりました。
「ぼくは、“きうち”っていうんだけど、今日は“Qちゃん”って呼んでください。なにかわからないことがあったりしたら、“Qちゃん!”って声をかけてね。」
今回のワークショップは、5歳から小学2年生までの子どもたちが集まっていますが、みんなで同じものを作ります。作るのは、牛乳パックひとつでできる「けん玉」!
「周りの子が作ってるものを見て、“あれ、いいなあ”って思ったら、どんどんマネしてみて。マネされた子も、嫌がらずに教えてあげよう」、ときうちさん。子どもたちが自由な気持ちで工作を楽しめるよう、場づくりをしていきます。
「じゃあ、誰かはさみをかしてくれる?」
きうちさんの呼びかけに対して、子どもたちが次々にはさみを差し出します。刃の方を相手に向けていた子もいましたが、すぐに気づいて持ち手側をきうちさんに向けました。はさみを渡す時は、刃を相手に向けないこと。子どもたちが自ら気づく、きっかけづくりでした。
子どもたちと一緒に工作をするにあたっては、とにかく「好きなことをやっていい」という雰囲気を作ることを大切にしていると、きうちさんは言います。保護者の方としばしおわかれしてもらうのも、「マネしたかったらマネしていいよ」と伝えるのも、大人の顔色をうかがったり、いきなりオリジナリティを求められたりすることなく、子どもたちがのびのびと工作に取り組めるようにするため。はじめは緊張している子どもたちも、「危なくなければ何をしてもいい」という空気づくりをはじめにしっかりしておくことで、じっくりと工作に集中することができるのだそうです。
さあ、けん玉作りが始まります! ひとつずつの工程を、まず きうちさんが前でやってみせて、そのあとに子どもたちが挑戦していきます。牛乳パックの真ん中にはさみで穴をあけ、そこにはさみを入れて半分に切り分けて……。5才から小学2年生までの子どもたちが参加しているので、はじめはうまくできない子も、すぐにできて先へ先へ進もうとする子もいます。戸惑っている子は、きうちさんがアドバイスしたり、手伝ったりしながら、けん玉作りが進んでいきます。
けん玉作りの中で、きうちさんが子どもたちにしっかり伝えていたのが、「はさみの使い方」。牛乳パックにはさみで穴を開ける時は、紙を切るときとは違う、独特な持ち方をします。間違った道具の使い方をしてしまうとけがをする恐れがあるので、作り方は自由でも、子どもたちの道具の使い方は注視されているそうです。
さて、はじめは少し緊張ぎみだった子どもたちも、手を動かしているうちにどんどん表情がほぐれていって、自分が工夫したところをお友だちやスタッフに教えてくれるまでに! 完成が近くにつれ、テープでカラフルにしたり、ぎざぎざに切り込みを入れてみたり、牛乳パックを切った後のゴミを飾りにしたり……楽しい工夫がどんどん飛び出します。
ひとつ目のけん玉を作り終えた後は、作ったけん玉で遊ぶ子、もうひとつの牛乳パックでまたけん玉を作る子や、好きなものを作り始める子も。ワークショップが始まる前に遊んだ、牛乳パックの「底」でできたコマ作りに挑戦する子どもたちも見受けられました。
今回のワークショップで印象的だったのは、はじめは「作り方」を気にしながら、おそるおそる手を動かしていた子どもたちも、時間が経つにつれてどんどん積極的になっていったこと。
「見て見て! こっちは三角で、こっちは丸で、最後は四角に切ったの!」
「(コマにカラーテープをはりながら)こういうのは適当にやるのがいいんだよ。」
「2個目の牛乳パックで、ペンギン作ってる。これは結構難しいんだよね!」
子どもたちが、自分で作る楽しさと、新しいものが生まれる驚きをたっぷり味わえたのは、「好きなことをなんでもしていい」というのびのびとした空気の中でこそだったのだと感じます。
時間いっぱいになるまで、思い思いに工作と遊びを満喫した子どもたちは、とても満足した様子で「Qちゃんバイバーイ!」と帰って行きました。
きうち かつ
1957年東京生まれ。著書に『工作図鑑』、絵本に『やさいのおなか』『やさいのせなか』『くだものなんだ』(以上福音館書店)など。「かがくのとも」では「ジャムさんち」シリーズなどの遊び絵本を手がけ、2019年5月号『なにが みえるかな?』が7作目。作品一覧はこちらから。
2019.07.31
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