8月23日 ディック・ブルーナさん|うさこちゃんの生みの親
月に1回、その月にお誕生日を迎える作家・画家とその作品をご紹介する「絵本作家の誕生日」。8月23日は、うさこちゃんの絵本で知られるディック・ブルーナさん(1927-2017年)のお誕生日です。
うさこちゃんの生みの親
ディック・ブルーナさん(1927年8月23日生まれ)
8月23日は、世界一有名なうさぎのおんなのこ、うさこちゃんの生みの親であるディック・ブルーナさんの誕生日です。ブルーナさんは、1927年にオランダのユトレヒトで生まれました。ブルーナ家は出版社を営んでいたため、幼いころから本に親しみ、絵を描くのが大好きでした。第二次世界大戦後、ブルーナさんは父親の出版社でグラフィック・デザイナーとして仕事をするようになり、本の装丁やポスターの制作などを数多く手がけるようになります。
うさこちゃんのおはなしが誕生したのは、ブルーナさんが結婚し、子どもが生まれてからのことでした。 家族と一緒に海辺で休暇を過ごしていたとき、野うさぎが走りまわっているのが見えました。まだ小さかった子どもに、ブルーナさんはうさぎの話を語って聞かせました。 そうしてできたストーリーが元となり、1955年にうさこちゃんの誕生を描いた『ちいさなうさこちゃん』が出版されたのです。実は、このとき描かれたうさこちゃんは、今とは少し違って両耳が傾いていました。その8年後、おなじみのぴんと耳のたったうさこちゃんの絵に描きなおされた『ちいさなうさこちゃん』が、『うさこちゃんとうみ』『うさこちゃんとどうぶつえん』『ゆきのひのうさこちゃん』とともに出版されると、ブルーナさんの絵本はたちまち子どもたちの心をとりこにしました。
ブルーナさんの絵は、とてもシンプルです。黒く太い輪郭線に、赤・青・緑など、ブルーナ・カラーと呼ばれる独特の限られた色のみを使って描かれています。一見簡単そうに見えるうさこちゃんの絵ですが、そっくりに描くのはとても難しい!(試しにまねして描いてみてくださいね。)実は、ブルーナさんは、1冊の絵本のために何百枚ものスケッチを重ねて構図を決めます。ゆっくりと慎重に筆を運び、輪郭線を描いたあと、色を決めていきます。ブルーナさんのシンプルな作品には、繊細な制作過程が秘められているのです。
日本では、1964年に石井桃子さんの訳で8冊が出版されました。「ナインチェ(うさぎちゃん)・プラウス(ふわふわ」というオランダ語の語感を活かして「うさこちゃん」と名付けられ、たちまち日本でも大人気の絵本となりました。ブルーナさんの絵本をはじめて目にしたとき、編集者の松居直は、ブルーナさんの絵の「正面性」に驚き、すぐに出版を決めたといいます。どの絵本も、動物、人、家や草花までもが、しっかりと正面を向いていて、子どもたちの視線をとらえてはなしません。
ブルーナさんは、2011年に、123作目となる絵本『うさこちゃんとふがこちゃん』を発表し、また同年の東日本大震災の際には、日本の子どもたちにメッセージを送ってくださいました。
惜しくも2017年2月に89歳で他界されましたが、その数々の絵本は、これからも世界中の子どもたちに愛され続けることでしょう。
ブルーナさんの作品一覧は、こちらからご覧ください。
2018.08.23