佐々木マキさんが『へろへろおじさん』で講談社出版文化賞を受賞!
『やっぱりおおかみ』『まじょのかんづめ』など、くっきりとした描線とシックな色づかい、そして独特な世界観が魅力の作品で知られる絵本作家の佐々木マキさんが、第49回講談社出版文化賞・絵本賞を受賞されました! 都内で行われた受賞祝賀会にて、受賞作品『へろへろおじさん』について、お話を伺いました。
子どもも大人も楽しめる「不条理受難ものがたり」
―この度は、講談社出版文化賞・絵本賞の受賞おめでとうございます。佐々木さんの作品のファンの方や、『へろへろおじさん』を楽しんでくださった読者の方に、メッセージをいただけますか。
子どもさんだけじゃなくて大人の人も最後まで面白がってくれるようなものができないかなと思って、今回は大人の人も視野に入れながらやってみました。最初のアイデアでは、もっとひどい目にあう予定だったのですが、子どもさんが「これはあまりにもひどい!」「やめてー!」と思ってしまうといけないので、いかにもありそうで、それほど被害は大きくない、そのほどほどを考えていくのに時間がかかりました。
―30年前のメモにあった「不条理受難ものがたり」というフレーズが、『へろへろおじさん』につながったとうかがいましたが、たくさんお持ちのアイデアの中で、「不条理受難ものがたり」が30年かけて作品になったのは、なぜでしょうか。
やっぱりやりたかったんですね。でも、時期が来なかったんですね。書く方の僕だけの時期じゃなくて、たまたま今回福音館さんでしたけれども、出版社の方でも、そういうのを出してもいいかな、という寛容さというか、許容度というか、そういう時期も多分良かったのではないかなと。
「まあまあ、ありかな」という絶妙なリアリティ
―はじめのアイデアでは、おじさんがもっとひどい目にあうことになっていた、とのことですが……
もっと荒唐無稽な、残酷な感じだったんですけど、やっぱり自分でもちょっと納得できなくて、いかにも日常、まあまあ、ありかなっていうくらいのリアリティがだせたらな、と思いました、「ぶた追い祭り」とかはあり得ないことなんですけれども、ああいうお祭りがあってもおもしろいかなと。牛を町に放って、男たちが走って、怪我しても大丈夫みたいな、ああいうのが頭にあって、そういう恒例のお祭りがあったら楽しいかなと。
スムーズに進んだ絵本づくり
編集部と作者の間で、結構揉めることもあるんですけど、この作品に関しては全然なかったです。何か言うとしたら編集担当のIさんが言うかなと思ってたんですけど、あんまり何も言わなかった。というのはね、女の人がおじさんの脚に犬をつないで、お店の中へ入っていく場面。Iさんが「ここどうします?」って言うから、「ああもう描き直しかな」と思って、ここに街灯をたてて、犬を街灯につなぐ、ごく当たり前の場面に変えようと思ったんですけど、Iさんはちょっと想像すると、「ああ、この人は、物事に構わない人なんですね」って言うから、そうです、そういう人ですって(笑)。あとはなんともなかった。
―「へろへろおじさん」というタイトルは、アイデアと一緒に最初から思いつかれていたんですか?
はい、はいそうです。タイトルがすぐに思いつく場合は、結構僕の経験ではうまくいくんですよ。中身はできたのに、タイトルがなかなかいいのを思いつかない、そういうのはなかなか進まない。自分の中で、すっと行ってないなっていう。今回、そういう意味ではスムーズでした。
佐々木マキ(ささき・まき)
1946年、神戸市生まれ。マンガ家、イラストレーター、絵本作家。絵本に『やっぱり おおかみ』『くった のんだ わらった』『まじょの かんづめ』『まちには いろんな かおが いて』『おばけが ぞろぞろ』『はぐ』『くりんくりん ごーごー』(以上、福音館書店)、「ぶたのたね」シリーズ、「ムッシュ・ムニエル」シリーズ、『いとしのロベルタ』『ぼくがとぶ』(以上、絵本館)、「ねむいねむいねずみ」シリーズ(PHP研究所)、童話のさし絵に『ナスレディンのはなし』(福音館書店)、マンガ作品集に『うみべのまち 佐々木マキのマンガ1967-81』(太田出版)、画集に『佐々木マキ見本帖』(メディアリンクス・ジャパン)などがある。京都市在住。
長谷川摂子さんとの対談記事の再録も、こちらからご覧いただけます。
2018.06.01
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