蛇口から水がでてくる不思議!『すいどう』
『すいどう』
蛇口を開けると当たり前に流れ出てくるきれいな水。考えてみればとても不思議です。どこからこの水はやってきて、どこへ流れていくのでしょう。
ふだん、水道の管は建物の壁の中や、地中深くに埋もれていてわかりません。この絵本は、そのしくみを、子どものみならず、すべての人にわかりやすく紹介する作品です。
ほとんどの水の源は、山の上に降った雨です。それが、川になって流れ、途中で浄水場に取り込まれてきれいになり、上水道を通り、各家庭へ送られていきます。そうして、台所やお風呂、トイレなどそれぞれの用途で使われた水は、下水道を通り、下水処理場できれいな水に戻し、最後、川へ海へと流れていきます。海の水はやがて蒸発して雲となり雨になって、再び山に降り注ぎます。
この作品は単なる水道の紹介だけではなく、一度使われた水が様々な過程を経て再び利用されていく「水の循環」も描いています。水は日本人にとって、蛇口をひねればいくらでも出てくる、あって当たり前の資源ですが、実は地球上で限られた大切なものであるということを忘れてはいけません。山に雨が少なければ水不足になり、川の水に異物が入れば健康被害に及ぶ事態にも、家庭排水や工業排水のちょっとした汚れが地球規模の汚染にも繋がります。読んでくれた子どもたちには、そのあたり何か少しでも感じてもらえればと思っています。
作者の百木一朗さんは工業デザイナーならではの視点で、モノ作りや、修理などにも注目されていますが、本作品は、ある日、百木さん宅の水道が水漏れして、床下の水道管を修理しているうちに、自然に物語が膨らんでいきました。床下の細い水道管から、外のマンホールの下の太い水道管をたどっていくと、山へもつながり、海にもつながっていくのです。
人間が生みだした巨大な迷路のような水道管の不思議をみなさんもいっしょにのぞいてみてください。
水の循環に関わる絵本には、『かわ』や『しずくのぼうけん』などがあります。ぜひ、こちらもあわせてお楽しみください。
担当S マンホールのデザインは町によってさまざま。どうぞみつけてみてください!
2022.11.11