赤ちゃんが大好き! 色鮮やかな“まるの絵本”『まるてん いろてん』
『まるてん いろてん』
表紙から裏表紙にかけて、色とりどりのまるが描かれた絵本『まるてん いろてん』。
ページをめくるたびに変わる、まるの表現が目にも鮮やかなこの絵本、2015年に「0.1.2.えほん」シリーズで刊行以来、赤ちゃんと最初に読むファーストブックとしても親しまれています。
まず、最初のページをめくると、「まる てん」ということばと、白地にくっきり描かれた赤いまるがひとつ、ぱっと目に飛び込んできます。次のページをめくると、「まる てん てん」。白地に青いまると黄色いまるが並んでいます。さらにページをめくると、「まる てんてんてん」。青いまる、黄色いまるに、赤いまるが加わって……。まるがひとつずつ増えていく展開に、これからなにが始まるのかな、と期待がふくらみます。
このあとの「てんてん あーん」「てんてん もぐもぐ」「てんてん にっこり」は、赤ちゃんが大好きなページ。まるが目と口の位置にあるだけなのに、赤ちゃんでもしっかり顔と認識して、こちらににっこり笑いかける表情にうれしくなるようです。
さらに、まるが集まって、大きくなったり、小さくなったり、見開きの画面いっぱいダイナミックに動き出します。
動物や食べ物など具体的なものがテーマの絵本とは違い、抽象的なかたちをモチーフにした絵本は、一見するとシンプル過ぎて、赤ちゃんは興味を持つのかしら、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。でも、鮮やかな色やかたち、リズミカルな音やことばは、それだけでじゅうぶん赤ちゃんをひきつける力があります。
実際にこの絵本が生まれたきっかけは、造形作家でもある作者の中辻悦子(*)さんが、お孫さんが小さいときに、まるが並んだ作品に興味をもち、ひとつひとつ指さしながら飽かず眺めていた姿が印象的だったこと。小さな子どもがいつまでも見入ってしまう不思議な世界を表現したら、という発想から、この絵本は生まれました。
赤ちゃんは、自然にそなわったやわらかな感性で受けとめ、目や耳だけでなく、からだ全体で絵本を味わい、楽しむことができるのです。
ぜひ、親子で、画面いっぱいに広がる“まるの世界”を存分にお楽しみください。
*中辻さんの「辻」は、正式には「一点しんにょう」です。
担当M 他にも、『もけら もけら』『まる まる』など、色やかたちをモチーフにした絵本、ふしぎなことばの絵本はたくさんあります。自由に想像して、日常とはまた違った感覚に触れてみるのもおすすめです。
2021.09.24