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ただ絵が飾ってあるだけじゃない! どろぼうたちがみた、美術館の驚くべき秘密とは『美術館にもぐりこめ!』

ただ絵が飾ってあるだけじゃない! どろぼうたちがみた、美術館の驚くべき秘密とは


『美術館にもぐりこめ!』

町のはずれにたたずむ『ふしぎ美術館』。そこに、三人のどろぼうたちがやってきました。彼らの狙いは、美術館に飾られているはずの名画や名作たち。売れば10億円にもなるというお宝に大はりきりの三人は、さっそく裏口へ回って、誰にも気づかれずに建物の中へ侵入することに成功しますが、あれれ、中は展示室らしからぬ部屋ばかり。

番狂わせはまだまだ続きます。なんと、展示室に入っても、肝心のお宝が見当たりません。『ふしぎ美術館』では、新しい企画展の準備が行われており、展示室にはまだ作品が運び込まれていなかったのです。

実は、美術館で展覧会が開催されるまでには、私たちの目に見えないところで、たくさんの作業が必要なのだそう。『ふしぎ美術館』でも、様々な美術品のプロフェッショナルたちが協力して、絵の並び順を決め、運び込み、点検し、飾り、照明や空調を調節します。これにはどろぼうたちもびっくり。そして、ついには警備のプロまで登場して、絶体絶命のピンチを迎えてしまいます。

舞台裏で、たくさんのことが行われている「ふしぎ」だらけの美術館。果たしてどろぼうたちは、プロフェッショナルたちの目をかいくぐってお宝を手に入れることができるのでしょうか? 最後までわくわくどきどきしながら楽しめる一冊です。

この絵本のみどころのひとつは、なんといっても、盛りだくさんのプロフェッショナル紹介! 美術館の運営に携わる人々の仕事が、ひとつひとつ分かりやすいイラストとともに丁寧に説明されています。中には、美術品専門の運搬業など、大人も思わず「こんな仕事があるんだ!」と驚いてしまうような仕事の紹介もあり、新しい発見につながることうけあいです。

また、そんなプロフェッショナルたちが働く様子をとおして、ひとつの企画展がつくられる過程を知ることができるのも、この絵本の大きな魅力。ひとつひとつの展示の背景に、作品を最も効果的にみせようとする緻密な計算が働いていることを知ると、次に美術館に行った時の作品鑑賞の楽しみがひとつ増えるのではないでしょうか。

そして最後にもうひとつ、『ふしぎ美術館』の学芸員さんは、どろぼうたちが寝ている間に、わたしたちをこっそり美術館の秘密の部屋に招待してくれます。しかし、その全容をここでお伝えすると、どろぼうたちにまた狙われてしまうかもしれないので、そちらは絵本を読んでのお楽しみということにしましょう。ちなみに私は大学で美術史を勉強していたのですが、美術館にこんな部屋があるとは知りませんでした……。ぜひこの秋は、親子で絵本を開いて美術館の秘密を探りに行ってみてくださいね。



金曜担当・U
チームふくふく本棚のNew Face。趣味は、好きな俳優の演技を真似して悦に入ること。

2018.10.19

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